中古マンション売却査定のポイント(134)マンション売却のときの特例

税金の基礎知識

「中古マンションの売却・買換えをしたときの特例とは?」

 

中古マンションの売却を考え、「とりあえず売却査定に出してみようかな」と思っているのなら、売却や買換えのときに使える特例についても知っておくとよいかもしれません。
税金に関するものって、専門用語も多く、話がややこしくてわかりにくく感じたりしませんか?しかも、初めて自宅を売却するような方にとっては、とても難しく感じることかもしれません。

ここでは、中古マンションの売却、買換えをしたときに使える特例についてご紹介していきたいと思います。
これから査定に出す方は、だいたいどのくらいの査定額が出れば売却してもいいかな・・・という指標になるかもしれません。
もうすでに査定額が出ている方なら、より具体的に、その査定額でどのくらい得をするのか(損をするのか・・・)把握できると思いますよ。

中古マンションを「売る」は2種類!


中古マンションを「売る」と一口に言っても、ここでの意味は2種類にわかれます。
1つ目は、「売却」です。
売却とは、中古マンションを売って、次の家は購入しないパターンです。
売却した後、賃貸物件に住んだり、実家に帰ったり、特例で定める期間内に次の家を購入しないときは、すべて「売却」とします。
2つ目は、「買換え」です。
中古マンションを売って、次に住む家を購入するというパターンです。
中古マンション売却査定サイトなどで使われている「売却」という言葉の中には、この「買換え」を含んでいる場合が多いと思いますが、ここではわけて考えたいと思います。

そして、「売った」ことにより、利益が出る場合と損をする場合があると思います。
そのマンションを購入した金額より査定額が高く、売却したことにより利益が出る場合を「売却益が生じる」、逆に、そのマンションを購入した金額より査定額が低く、売却したら損をする場合を「売却損が生じる」といいます。

この「売却」、「買換え」、「売却益」、「売却損」から、中古マンションを売却、買換えした際の特例についてみていきたいと思います。

特例が受けられる中古マンション売却、買換えの条件は?


売却する中古マンションは、下記の条件に当てはまることが必要です。
(1)現在居住している家とその敷地を売った場合
(2)転居した日から3年経過した年の年末までに売却した場合
(3)単身赴任の場合は、配偶者などが居住している家を売却した場合
この他に、敷地のみの売却についても特例がありますが、中古マンションの売却、買換えには当てはまらないと思いますので、ここでは触れずにいきたいと思います。

特例は5つ!


中古マンションを売却、買換えしたときの特例は、5つあります。
(1)3,000万円の特別控除
(2)10年超所有軽減税率の特例
(3)特定居住用財産の買換えの特例
(4)居住用不動産の買換えにおける譲渡損失の損益通算、繰越控除の特例
(5)特定居住用不動産における譲渡損失の損益通算、繰越控除の特例

(1)~(3)は、売却益が生じたときの特例で、(4)と(5)は売却損が生じたときの特例です。
それでは、(1)から順番にみていきましょう。

1.3,000万円の特別控除とは?
中古マンションを、「売却」したときに適用されます。
この特例は、個人がマイホームの売却をしやすくするために作られました。

譲渡所得から、所有期間の制限なく、一律に3,000万円が控除されます。
3,000万円が引かれた後の金額に税金がかかります。
譲渡所得とは、不動産を売却したことによって生じた所得のことです。
譲渡所得に対しては、他の所得とは分離して所得税、住民税が課税されます。

つまり、売却した中古マンションの売却価格が、購入した当時より3,000万円以上値上がりしていれば、「売却益あり」となり、税金がかかるということです。
しかし、一般的に普通の会社員が購入するような規模のマイホームであれば、3,000万円以上の値上がりをして売却できる場合は少ないと考えられ、税金はかからないことが多そうです。

万が一、売却査定で、購入価格より3,000万円以上の差額のある高額な査定が出たら、税金がかかる可能性があるということを覚えておきましょう。

そして、(2)と併用ができます。

税額の計算は、
売却収入金額-(売却した建物・土地に関わる費用+売却に関わる費用) = 譲渡所得
譲渡所得 - 3,000万円 = 課税譲渡所得
課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税) = 税額
という計算になります。

税率は、物件を売却した年の1月1日における所有期間が5年以下、5年超、10年超の3パターンあります。
具体的に確認していきましょう。
5年以下のときは、所得税30%、住民税9%、計39%です。
5年超のときは、 所得税15%、住民税5%、計20%です。
10年超のときは、後述します。

所有期間が5年以下と短いと、中古マンションとしての価値は高く、査定も高額で、売却しやすいと思いますが、その分、40%近い税率で税金がかかってくるということです。
なかなか高い税率で驚いてしまいますね。

しかし、実際は、とても古い物件であるならばまだしも、所有期間が5年以下で、購入した金額より売却した金額が3,000万円以上値上がりする・・・ということは、あまりなさそうですので、そんなに心配しなくても大丈夫です。

2.10年超所有軽減税率の特例とは?

物件の売却をした年の1月1日における所有期間が10年を超えているとき、税率が軽減されます。
さきほどもご説明した通り、(1)と併用できます。
つまり、3,000万円の特別控除後の金額が、課税譲渡所得になるというわけです。
税額の計算式は先ほどと同様、課税譲渡所得 × 税率 = 税額 です。

課税譲渡所得が、6,000万円以下と6,000万円超で、税率が異なります。
まずは、課税譲渡所得が6,000万円以下のとき・・・
所得税が10%、住民税が4%、計14%です。
次に、課税譲渡所得が、6,000万円を超えているとき・・・
6,000万円と6,000万円を超えた部分とにわけて算出します。
6,000万円の部分は、所得税が10%、住民税が4%、計14%・・・でしたね。
6,000万円超の部分は、所得税が15%、住民税が5%、計20%です。

かなり古い物件であった場合、3,000万円の特別控除を受けても、売却益が生じるときがあります。
そのときは、この特例で税率が軽減されるというわけです。

3.特定居住用不動産の買換え特例とは?
物件の売却をした年の1月1日における所有期間が10年を超え、買換えをするときに適用される特例です。
「売却」だけでは適用されないということですね。
そして、さきほどご説明した(1)、(2)とは、併用できません。
売却期限、売却価格の上限、居住期間の通算年数について定められています。

また、買換えで購入する不動産についても条件があります。
・居住用部分が50㎡以上であること
・敷地の面積が500㎡以下であること
・中古の場合は、築25年以内の物件、または新耐震基準への適合が証明された物件、既存住宅売買瑕疵保険に加入済みの物件であること
など・・・。
あとは、売却してから次の物件を購入するまでの期間の定めや、その購入した新しい家に住み始めるリミットなどが定められています。

1人暮らし用の狭めのマンションなどは、該当しないということですね。
そして、「住む」ことが条件になっていますので、投資目的で購入したものなども当てはまらないということになります。

税額の計算は、
・中古マンションを売却した金額より新たに購入した不動産の金額が高かった、もしくは同額だった
・中古マンションを売却した金額の方が、新たに購入した不動産の金額より高く、利益が出た
この2パターンにわかれます。

まずは、中古マンションを売却した金額より新たに購入した不動産の金額が高かった、もしくは同額だったときは・・・売却益が生じませんから、当然ながら課税されません。
次に、中古マンションを売却した金額の方が、新たに購入した不動産の金額より高く、利益が出たとき・・・買換え代金そのものへの課税はされず、売却代金と買換え代金との差額に、所得税・住民税がかかります。

購入する新しい家に目星がついている方は、売却査定を依頼した中古マンションの査定額が、新たに購入したい家の価格より高かったか低かったか、一度確認をしてみてください。

ここまでは、売却益が生じた場合の特例でした。
次は、売却損が生じた場合の特例です。
売却損が生じると、所得税が戻ってきます。

3-4.居住用不動産の買換えにおける譲渡損失の損益通算、繰越控除の特例とは?
売却した中古マンションが購入した時の価格より、低い価格での売却となったときに適用されます。
中古マンションを売却した後に、「買換え」をすることが条件になる特例です。
他の特例の適用を受けていたら、この特例は適用されません。
売却損を出した翌年から3年間、その他の所得から繰越控除をすることができます。

また、買換えで購入する不動産について条件があります。
50㎡以上の面積があること、新たな家を購入する期限の定め、住宅ローン残高があること、購入した新たな家に住みはじめるリミットが条件として定められています。

新たに購入した家を現金で一括で購入したとき(羨ましい話ですが!)などは、適用にならないということになりますね。

5.特定居住用不動産における譲渡損失の損益通算、繰越控除の特例について
「売却」により売却損が出たときに適用されます。
「買換え」をしなくても、適用になります。
上記「居住用不動産の買換えにおける譲渡損失の損益通算、繰越控除の特例」で算出した損失か、売却する中古マンションにローン残高があるときは、その残高から売却価格を引いた金額か、どちらか少ない金額が売却損となります。

まとめ


いかがでしたか?
売却の査定依頼をしたあなたのマンションの査定額とあなたがそのマンションを購入した時の金額と比べて、また、次に購入しようとしている家があるのでしたら、その販売価格と比べてみてください。
受けられる特例は、しっかりと受け、損のない中古マンションの売却、買換えをしましょう。