マンションや家の不動産売却をした年の固定資産税は誰が払う?清算方法を解説

税金の基礎知識

マンションや一戸建て土地など不動産を所有している方に毎年課される税金があります。その不動産が所在する地方自治体に納付する固定資産税です。固定資産税は、3年ごとに市町村によって評価替えが行われる固定資産税評価額を基準として算出されます。その年の納税額は4月頃に自治体から送付されてくる納付書でわかります。不動産の所有者にかかる税金という事ですが、マンションや戸建てを売却した場合はどうなるのでしょうか?今回は固定資産税についての基本的な知識や、不動産を売却する際に知っておきたいポイントなどを解説していきたいと思います。

不動産に課税される固定資産税とは?

不動産を所有していると課税される税金「固定資産税」

「固定資産税」とは、土地や家屋などを所有している人がその資産が所在している市町村(23区は東京都)に支払う税金です。課税は毎年1月1日に決まります。つまり、毎年1月1日時点で登記簿に所有者として登録されている方に納税義務が発生します。土地や家屋を所有している限り毎年この税金を支払う必要があります。

固定資産税は、所有している建物と土地の両方に課せられ、納税額はそれぞれ固定資産台帳で定められた「土地評価額」や「建物評価額」に、税率をかけて算出されます。

また、所有している不動産が、都市計画区域(都道府県が整備・開発・保全する必要があると指定している区域)にある場合は、別途「都市計画税」も必要になります。都市計画税も建物と土地の評価額にそれぞれ税率を掛けて算出されます。

固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税の税率は0.3%が上限となっています。

固定資産税・戸建てよりマンションが高い理由

マンションと戸建てを所有している場合では、固定資産税に何か違いがあるのでしょうか。一般的に税額は戸建てよりもマンションの方が高くなる傾向があります。

その理由は主に2つで、住宅用の土地に対して税額を軽減する特例がある事と、マンションと戸建てでは建物評価額が違うためです。

住宅建築用の土地に対する税金は、「住宅用地の特例」で軽減措置があります。土地面積が200㎡までは課税標準額が6分の1に軽減されます。戸建てとマンションでは所有する土地の面積はマンションの方が一般的に少ない場合が多いでしょう。マンションの場合、所有者全員で土地を共有するため土地の持分が少なくなるからです。このため土地の持分が多い一戸建ての方が軽減の恩恵をより大きく受けられる事になります。マンションでも戸建てと同様に住宅用地の特例で軽減が受けられますが、土地の持分が少ないため軽減分は少なくなります。

また、建物に対する税額も一般的にマンションの方が高くなります。鉄筋コンクリート造のマンションと木造の一戸建てを比較すると耐久年数が長いマンションは建物評価が高いからです。建物に関しては土地のような軽減措置はないので、評価額にそのまま税率が掛かってきます。ですから評価額の高いマンションの方がより税額も高くなります。土地の軽減を多く受けられて建物評価額の低い一戸建ての方がマンションよりも固定資産税額は低くなるのです。

新築物件の軽減措置とは

マンションの方が一戸建てよりも税額が高くなる傾向にはありますが、新築物件に関しては一定期間税金の減額措置があります。減額措置の期間は、一戸建てよりもマンションの方が2年間長く設定されています。

戸建て住宅の場合は、3年間固定資産税額が1/2に減額されます。マンションの場合は、戸建てよりも期間が長く、1/2減額は5年間です。さらに長期優良住宅に関しては、それぞれ2年間期間が延長されて減額されます。

不動産売却時の固定資産税は誰が払う?固定資産税の精算とは

不動産を所有している限り、支払う必要がある固定資産税。ですからマンションや戸建てを売却してしまった後はもう関係ないと思われるかもしれません。しかし、売却した後も固定資産税の納付義務が売主にある場合には納付書が届く事になります。どのようなケースか見ていきましょう。

売却後も固定資産税の納付が必要なのは売主?

昨年末や年明けすぐにマンションや戸建てを売却したケース

固定資産税の納税義務があるのは、「1月1日時点で登記簿に登録されている人」というのが大前提なのですが、売却時点ではあまり意識していない場合も多いでしょう。昨年末や年明けすぐに売却をしたケースなどでは忘れかけた頃に納税通知書が届く、という事になります。

例えば、昨年の12月15日に所有しているマンションの売買契約を締結して、今年の1月10日に所有権移転登記の手続きを完了。今年の4月頃売却して所有していないマンションの納税通知書が自分に送られてきて驚いた、という場合です。もう既に自分のものでは無いのに、1年分の税金を支払わなければならないとすると、何だか損をした気分になってしまいます。

この場合、固定資産税の納税義務者は誰になるのでしょう。

先に述べたように固定資産税の納税義務者は、1月1日時点での所有者になります。そのため、年度の途中で不動産を売却した場合でも、1月1日時点の所有者のもとに固定資産税の納付書が届きます。これは、都市計画税も同様です。

納税通知書が届いた後に売却するケース

例えば、8月に不動産を売却したとします。この場合、売却を行った年の1月1日時点での所有者は売主です。そのため、その年の固定資産税の納付書は売主に送付されます

固定資産税は、1回で支払う事も可能ですが、一般的には分割して4月、7月、12月、2月の4回で納付する方も多いでしょう。8月に売却した例では、売却後の12月、2月であっても納税義務が生じるのは売主です。

固定資産税の精算とは

先の2つのケースでも見てきたように、マンションや戸建てを売却した年は1月1日時点で所有していた人、つまり売主に納税義務が発生します。しかし、売却後は既に所有権が移っているのに、所有していない期間の固定資産税も支払うのは売主として納得できないでしょう。

そのため、不動産の売却時には固定資産税の精算を行うことが一般的です。所有権が移転した後の期間分を日割り計算して買主に負担してもらうのです。しかし、あくまでも精算されるのが一般的となっているというだけで、法的な決まり事ではありません。精算方法などは売主や買主の間の話し合いで決まります。それでは、固定資産税の精算について詳しく見ていきましょう。

固定資産税の精算の方法は

固定資産税の精算は、不動産の引渡時点で行われる事が一般的です。実際の細かい計算は不動産仲介業者の担当者が行ってくれることになると思いますが、固定資産税を日割りにして、売買金額のなかで調整をします。例えば、固定資産税が年額20万円の不動産を売却して、7月1日に引渡したとします。本来であれば、7月1日以降の半年分の固定資産税は買主が負担すべきです。しかし、先ほども紹介したように納税義務者は年度内で変わることはありません。そのため、買主から半年分の固定資産税の10万円を受け取る事で、買主に固定資産税を負担してもらう形をとるのです。不動産の売却金額が4,000万円の場合、買主は半年分の固定資産税を追加した4,010万円を支払うことで、固定資産税の精算を行います。

 

こうした精算は、固定資産税に限られたことではありません。オフィスビルなどでは、固定資産税だけでなく、賃料や光熱費、駐車場代、共益費などのお金も売却期間中に動きます。例えば、賃料をテナントから徴収している場合、翌月分の賃料を当月に振り込んでいるケースも多いです。この場合、月末に取引をすると、買主が受け取れるはずの翌月分の賃料は売主が受領することになります。また、売買した月の光熱費は、1ヶ月~2か月後に請求が届くでしょう。

 

このように売却期間中にはさまざまなお金が動くため、売主と買主のどちらが負担をするのか、どちらのものなのか、を決めておく必要があります。こうしたお金を適正に分けることが精算です。しかし、精算をすることは義務ではありません。売主と買主の間の合意事項のため、商習慣という性質が強いです。

これは固定資産税の場合は精算をしないと売主が不利になるためです。不動産会社を挟んだ取引であれば、精算についての話もあると思います。もしも、当事者だけで取引をする場合は、売主は精算を忘れないようにしましょう。

固定資産税が払えない・未納の物件は売却出来る?

固定資産税を滞納したらどうなる?

固定資産税は、マイホームを購入した後は毎年支払う必要がある税金です。新築で戸建てやマンションを購入した場合には一定期間軽減措置がありますので、最初のうちはそれほどの負担感はないかもしれません。しかし、軽減措置の期間が終了した後は税額が急に高くなったように感じて驚く方もいらっしゃるでしょう。

固定資産税が支払えず滞納してしまったらどうなるのでしょうか?最悪の場合はせっかく手に入れたマイホームに住めなくなる可能性もあります。

固定資産税の納期限を過ぎると、こちらから相談に行かない限り、納付期限から20日以内に督促状が発送されます。法律では、発送日から10日以内に納付されない場合は滞納者の財産を差押えしなければならないと定められています。実際には納税できなくてもすぐに差し押さえという事にはならないでしょうが、督促に何の対応もせずに放置したままでいると預金口座の差押えや、勤務先の給与の差押えが先に行われ、最悪の場合は土地や建物が差し押さえられることになります。

何らかの事情で納税できない場合は、猶予や減免が受けられる制度もあります。滞納に気がついたら早めに納付するか、納付が難しい場合には速やかに市町村に相談することが必要でしょう。

固定資産税未納の物件は売却出来る?

前述で固定資産税を滞納してしまったらどうなるのかを紹介しました。滞納が長引く前に売却したいと思っても、固定資産税が未払いの状態で売却が出来るのか気になります。ここでは、固定資産税が未納となっている物件の売却についてお話したいと思います。

結論から言うと未払いの固定資産税があっても不動産を売却する事は可能です。

実は、不動産売却を考えている方のなかには、固定資産税を払えていない人も多いのです。こうした人は固定資産税の未納だけでなく、他の債務を抱えていることがほとんどのため、不動産売却をすることで返済資金を調達したいと考えています。

しかし、差し押さえ登記が設定されてしまっている場合には、実際に購入してくれる買主はほぼいないでしょう。この登記がある場合、売主の未払いが続くと不動産が差し押さえられてしまうため、買主は不動産を失うことになってしまうからです。ですから差し押さえ登記がある不動産の売却を考えている場合は、延滞している税金を全額支払い、差し押さえ登記を取り消してもらう必要があります。しかし、現実的には資金難の人が全額を払うのは厳しいため、不動産業者など専門の仲介者に入ってもらって調整が必要になるでしょう。例えば物件の値段を相当額引き下げるなど買主に納得してもらった上で、税金相当額を相手方に負担してもらう形で先に未納税金を納めて差押登記を抹消し、その後に改めて物件の引き渡しや代金の授受を行う方法などが考えられます。

まとめ

マンションや戸建ての固定資産税について基本的な知識や、売却する際の精算方法、滞納してしまった場合などについてもお伝えしてきました。売却時の固定資産税の負担については信頼出来る不動産仲介業者を橋渡し役として、売主買主がきちんと話し合いながら双方が納得できる形で負担をしていくのが良いでしょう。