賃貸不動産を相続する場合に知っておきたいこと

相続した不動産売却のポイント

賃貸不動産の相続について

賃貸アパートや賃貸住宅を相続税対策のために活用する人が少なくありません。両親が住んでいた実家の土地や建物や両親が経営していた賃貸不動産がある場合、そのまま相続するか、賃貸不動産として相続するかを迷っている人もいるでしょう。

賃貸不動産のまま相続する場合、不動産売却する場合のどちらも税金がかかるため比較検討することが大切です。特に相続した不動産をそのままの状態で維持し、賃貸活用もしない場合、物件の維持費だけでなく固定資産税などの税金がかかってきます。

また、賃貸不動産を相続する場合、相続財産としての評価額がどのように決まるかも知っておきましょう。下記では、相続税評価の計算方法や、賃貸不動産が相続税対策に向いている理由をご紹介します。

【賃貸不動産の相続税評価】
賃貸不動産がどう評価されるかにより、相続税や相続分も変わってきます。特に不動産は財産評価が難しいといわれているため、評価方法について知っておきましょう。

評価額の決定

相続財産に含まれる不動産には、亡くなった人(被相続人)の居住用住居や土地はもちろん、賃貸利用していた土地や建物もその対象になります。相続財産のうち、不動産は現状の土地の時価や活用状態などによって評価が大きく分かれるため、相続人間でその評価額を巡ってトラブルが起きやすいです。

不動産の評価は被相続人が亡くなった日の時価を評価額とします。これは、相続税法で相続財産を相続人が取得した時点での価格で評価すると決められているためです。

不動産の評価方法

相続財産のなかでも財産評価が一番難しいのが不動産です。たとえば、実家なら土地と建物は別々に不動産評価がされます。土地と建物の評価のうち、土地の評価は「路線価方式」または「倍率方式」で行われます。

路線価方式とは市街地の土地評価によく使われるものであり、毎年7月頃に国税庁が発表する路線価をもとに計算する方法です。道路に面している宅地1㎡あたりの土地の評価額を路線価と呼びます。

一方、倍率方式は市街地から離れた郊外エリアや、山間部など路線価が発表されない土地に対して評価する方法です。この場合、評価額は固定資産税評価額に国税局長が、そのエリアごとに定めた評価倍率を掛けて計算します。

計算方法

賃貸不動産の場合、土地と建物は別々で評価されるのが大前提です。まず、相続対象となる土地について考えていきましょう。賃貸不動産は建物が建っているため、更地よりも評価額は低いです。また、建物を賃貸物件として第三者に貸していることから、もう一段階、評価が低くなります。くわえて、土地の面積に応じて評価額がさらに引き下げられます。

相続の場合、不動産の評価額は市場で取引される価格よりも低くなります。これは、国税庁が発表する路線価に基づいて評価額が計算されるためです。

土地の資産価値(路線価方式)=路線価(1㎡あたり)×面積(㎡)

路線価は市場価格の7割から8割程度といわれているので、相続での評価額は実際に売買される価格より2割から3割ほど安くなります。また、郊外や山間部のように路線価が定められていない土地では次のように計算されます。

土地の資産価値(倍率方式)=固定資産評価額×評価倍率

固定資産評価額も市場価格の6割から7割程度であることが多いです。

路線価または評価倍率から計算した土地の資産価値ですが、賃貸物件が建っている場合、次の計算式によって評価額がさらに低くなります。

土地の資産価値×(1-借地権割合×借家権割合(30 %)×賃貸割合)

借地権割合とは路線価と合わせて定められるもので、土地によって7段階に区分されています。実際の割合は国税庁の発表する路線価図を見ると確認できます。

7段階の区分はA(90%)、B(80%)、C(70%)、D(60%)、E(50%)、F(40%)、G(30%)の10%刻みであり、市街地になるほど評価が高くなります。

借家権割合は全国どこでも30%です。賃貸割合は、評価時点で賃貸利用されている床面積を指します。全室満室なら100%であり、全室空室が続いているなら0%です。

さらに借地権割合や借家権割合、賃貸割合で計算された後、賃貸不動産は「貸付事業用宅地」に分類されるため、土地面積が200㎡までの場合、さらに評価額が50%低く計算されます。

このように、賃貸不動産の相続評価額は市場の取引価格より大幅に引き下げられるのが特徴です。

相続税対策に有効な賃貸不動産

相続税の節税は、賃貸不動産を購入することによって実現しやすくなります。これは、相続税が相続資産のうち「純財産」と呼ばれる部分に計算されるためです。

賃貸不動産を相続税の観点から評価する場合、まず路線価方式や倍率方式で評価額が低くなり、賃貸建物があることで借地権割合や借家権割合の計算によってさらに引き下げられます。そのため、土地や建物を相続するときは、居住用や更地で受け継ぐよりも賃貸物件のほうが相続税が減額されやすいのです。