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住宅ローンの支払いが厳しくなり、任意売却を検討し始めた方の多くが不安に思うのは、「任意売却の基本的な仕組み」よりも、実は「売ったあとお金はどうなるのか」「自己破産と何が違うのか」「頼る業者を間違えないか」という具体的な部分です。任意売却とは何か、競売との違い、抵当権抹消の基本的な手続きについては、すでに詳しく解説した記事がありますので、まずそちらをご覧ください。
この記事では、それらの基本を踏まえた上で、任意売却をしたあとの残債の返済実務、自己破産に進むべきかどうかの判断基準、任意売却の悪徳業者の見分け方、そして離婚などで住み続けたい場合のリースバックという選択肢に絞って解説します。
先に基本を確認したい方へ
任意売却の基本的な仕組みや条件、競売との違いは任意売却と競売の違いは?任意売却のメリットデメリットを、住宅ローン返済中の抵当権抹消の手順や離婚時の注意点は住宅ローン返済中でも家は売却できる|抵当権抹消の手順と離婚時の注意点をご覧ください。
任意売却をしたあと、住宅ローンの残債はどう返済していく?
任意売却で不動産を売却できても、売却代金だけで住宅ローンを全額返済できるケースは多くありません。売却価格は市場価格の8割程度になることが一般的なため、多くの場合ローンの残債が発生します。
代位弁済のあと、返済先は金融機関から保証会社に変わる
住宅ローンには保証会社が付いていることが一般的です。返済の滞納が続くと、保証会社が金融機関へローン残高を立て替えて支払います(代位弁済)。これ以降、返済先は住宅ローンを組んだ金融機関ではなく、立て替えた保証会社(または保証会社から委託を受けた債権回収会社)に変わります。
任意売却で得た代金を残債に充当したあとも、なお残る金額については、保証会社と話し合いのうえで、無理のない範囲の分割返済を続けていくのが一般的です。住宅ローンには不動産という担保(抵当権)がありましたが、任意売却後に残る残債は担保のない借入金になるため、住宅ローンのときのような差し押さえの脅威はなくなります。ただし、返済義務そのものがなくなるわけではない点には注意してください。
「必ず減額してもらえる」わけではない
保証会社が債権を額面より低い金額でサービサー等に譲渡した結果として、残債の一部が実質的に圧縮されるケースがあると言われています。しかし、これは個別の債権譲渡の条件によって金額も有無も変わるものであり、公表された統一基準があるわけではありません。「必ず半分になる」「うちに任せれば減額できる」といった断定的な説明をする業者には注意が必要です。減額の可否や金額は、あくまで貸し手側(保証会社・サービサー)の判断に委ねられています。
残債の計算の前提として――売却物件の「契約不適合責任」はどうなる?
残債の金額は、最終的にいくらで売却できるかで決まります。その売却条件に関わる論点として、2020年4月の民法改正により、従来「瑕疵担保責任」と呼ばれていた売主の責任は「契約不適合責任」に呼び方と内容が変わりました。任意売却の物件は「現状有姿(そのままの状態)」で引き渡され、契約不適合責任を負わない特約が結ばれることが多いですが、これは法律上当然にそうなるわけではなく、契約書に免責の特約を明記した結果です。また、売主が不具合を知っていながら買主に告げなかった場合は、免責特約があっても責任を免れないことがあるため、把握している不具合は仲介する不動産会社に必ず伝えておく必要があります。
残債の交渉も、まずは売却価格の見込みから
残債がいくら残るかを具体的に考えるには、まず売却でいくらの資金が作れそうかを把握することが第一歩です。複数の不動産会社に査定を依頼し、金額を比較してみましょう。
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残債を払いきれないとき、自己破産という選択をどう判断するか
任意売却をしても多額の残債が残り、収入の状況からみて分割返済すら難しいと分かったとき、選択肢に入ってくるのが自己破産です。自己破産は「借金の返済ができない」という状態そのものを法的に整理する手続きで、任意売却とは目的が異なります。
自己破産の基本的な効果
裁判所に申し立てて自己破産が認められると、税金など一部の債務を除き、借金の返済義務がなくなります(免責)。一方で、一定の高価な財産は手放す必要があり、士業や警備業など一部の職業には破産手続き中は就けない制限が生じます。手続きが終わればこれらの職業制限は解除されます。
自由財産として残せる現金の上限は99万円
自己破産をしても、生活に最低限必要な財産(自由財産)は手元に残せます。現金については、破産法34条3項1号が、民事執行法131条3号(同施行令1条により66万円と規定)の金額の1.5倍にあたる額、つまり99万円(66万円×1.5)を自由財産の基準として定めています。この基準は2026年時点でも変わっていません。ただし、これは現金についての基準であり、預貯金は原則としてこれに含まれず、残す必要がある場合は別途「自由財産の拡張」を裁判所に申し立てる必要があります。具体的にどこまで手元に残せるかは個別の事情によって裁判所の判断が入るため、弁護士に相談することをおすすめします。
保証人への影響と信用情報への影響も踏まえて判断する
自己破産をしても、連帯保証人が付いている借入については、保証人に返済義務が移ります。自分だけの判断で自己破産の手続きを進めることは避け、連帯保証人になっている家族などには事前に必ず状況を共有してください。
なお、信用情報機関に事故情報が登録される、いわゆる「ブラックリスト」状態になる点は、任意売却で住宅ローンの延滞が続いた段階ですでに生じていることが一般的です。自己破産に進んだからといって新たに生じるものではありませんが、登録期間や新規の借り入れが難しくなる期間は自己破産の方が長引く傾向があるとされています。この点も踏まえ、弁護士費用も含めたトータルの負担感を確認したうえで判断することをおすすめします。
任意売却か、自己破産(+競売)かの判断の目安
| 状況 | 検討しやすい方向 |
|---|---|
| 売却後の残債を分割でも返していける見込みがある | 任意売却+残債の分割返済 |
| 収入や生活の状況からみて返済の継続自体が難しい | 自己破産の検討(弁護士へ早めに相談) |
| 売却先を自分で選びたい・引っ越し費用の交渉をしたい | 任意売却が向いている(競売にはこの余地がない) |
| 交渉ごとの手間をかけたくない・自己破産もあわせて検討している | 競売のまま進める選択肢も残る |
このほか、任意売却をするには、①借入先の金融機関の了承 ②税金の滞納による差し押さえがないこと ③競売の入札期間が始まる前であること(裁判所公式サイトによれば、入札期間が始まる2週間前までに公告が掲示されるため、公告を確認したらできるだけ早く任意売却の交渉を進める必要があります) ④共有者・連帯保証人の同意、といった条件を満たす必要があります。これらの条件や競売との詳しい比較は、任意売却と競売の違いは?任意売却のメリットデメリットで、競売のまま進めた場合に今の家に住み続けられる可能性については競売を避けて住み続けるには?任意売却との違い・メリット・デメリットを徹底解説で詳しく解説しています。
任意売却の悪徳業者に要注意――見分け方のチェックポイント
任意売却は民間の不動産会社が仲介するため、競売のように裁判所が手続きを進行させる仕組みとは異なり、業者選びの巧拙がそのまま結果に影響します。ローンの滞納という不安な状況につけ込む悪質な業者も存在するため、次のような特徴が見られたら注意してください。
| 要注意なパターン | なぜ問題か |
|---|---|
| 売買成立前に仲介手数料を請求してくる | 仲介手数料は売買が成立して初めて発生するのが原則。成立前の請求は不自然 |
| 「うちなら必ず残債を減額できる」と断定する | 残債の減額は貸し手側の判断次第で、業者が確約できるものではない |
| 「引っ越し費用が確実に◯万円出ます」と断定する | 引っ越し費用の捻出は金融機関との交渉次第で、確約できる性質のものではない |
| 専任媒介を結んだあと販売活動をせず放置する | 期日までに売却できず競売に進んでしまうリスクがある |
| 頻繁な訪問・インターホン越しの大声・水道の停止など強引な接触 | 正規の業者は書面・電話など通常の方法で連絡する |
任意売却そのものを対象にした公的機関の注意喚起は本記事執筆時点で確認できていませんが、隣接する「リースバック」の契約については、国民生活センターと消費者庁が2025年5月21日付で注意喚起を公表しています。強引な勧誘や、契約後の家賃値上げによるトラブルなど、任意売却の悪質業者と共通する手口も含まれるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。
出典:強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!(国民生活センター・消費者庁, 2025年5月21日)
信頼できる業者を見極めるには、任意売却の実績や、金融機関との交渉経験を具体的に説明してくれるかを確認し、複数の会社に相談したうえで比較することをおすすめします。
離婚後も家に住み続けたい場合の「リースバック」という選択
離婚にともなって住宅ローンの支払いが滞り、任意売却を検討することになった場合でも、子どもの生活環境を変えたくないなどの理由で「今の家に住み続けたい」と考える方は少なくありません。そのための方法の一つが、不動産を投資家や買取会社に売却し、その相手と賃貸借契約を結んでそのまま住み続ける「リースバック」です。
リースバックの家賃は、買取価格に対して年6〜10%程度が目安とされることが多いですが、これは不動産・金融業界のメディアが独自に示す参考値であり、公的な統計や統一基準に基づくものではありません。実際の家賃は物件や事業者によって幅があるため、具体的な条件は依頼先の事業者に確認してください。
また、家の名義人が元配偶者などご自身以外にもいる場合、名義人全員の同意がなければ任意売却もリースバックも進められません。登記事項証明書で名義を確認し、早めに連絡が取れる状態にしておくことが重要です。抵当権抹消の手続きを含む具体的な進め方は住宅ローン返済中でも家は売却できる|抵当権抹消の手順と離婚時の注意点で解説しています。
よくある質問
Q. 任意売却をしたら残債はすぐに全額返さなければいけませんか?
A. 一括での返済を求められるのが原則ですが、実際には保証会社(または保証会社から委託を受けた債権回収会社)と話し合い、収入に応じた無理のない金額での分割返済に応じてもらえることが一般的です。返済義務そのものがなくなるわけではありません。
Q. 残債は必ず減額してもらえますか?
A. 減額されるケースがあると言われていますが、確約されたものではなく、貸し手側の判断や個別の事情によって金額も有無も変わります。「必ず減額できる」と断定する業者には注意してください。
Q. 自己破産をすると現金は一切残せませんか?
A. 自由財産として現金99万円までは手元に残せます(破産法34条3項1号・民事執行法131条3号・同施行令1条に基づく基準)。ただし預貯金は原則対象外で、それ以上を残したい場合は裁判所への「自由財産の拡張」の申立てが必要です。個別の事情によって判断が変わるため、弁護士に相談することをおすすめします。
Q. 任意売却と自己破産のどちらを選べばいいですか?
A. 売却後の残債を分割でも返していける見込みがあるなら任意売却、収入や生活の状況から返済の継続自体が難しいなら自己破産の検討が現実的です。どちらも連帯保証人に影響が及ぶため、自分だけで判断せず、早い段階で弁護士や任意売却に詳しい不動産会社に相談することをおすすめします。
Q. 任意売却の業者を選ぶときの注意点は?
A. 売買成立前の手数料請求、残債減額や引っ越し費用の断定的な約束、強引な訪問・勧誘などが見られる業者は避けてください。任意売却の実績や金融機関との交渉経験を具体的に説明してくれるかを基準に、複数の会社を比較することをおすすめします。
Q. 任意売却は誰に相談すればいいですか?不動産会社と弁護士で役割は違いますか?
A. 役割が異なります。不動産会社(任意売却に詳しい会社)は、査定・金融機関との売却条件の交渉・買主探しといった売却実務の窓口です。一方、自己破産をすべきかどうかの判断、連帯保証人への影響の整理、残債の返済交渉などお金の整理に関わる法的な判断は弁護士の領域です。両方が関わる場面が多いため、任意売却の交渉と並行して弁護士にも早めに相談しておくと、あとで自己破産が必要になった場合にもスムーズです。
Q. 任意売却が完了するまで、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 金融機関との交渉状況や共有者・連帯保証人の同意の取り付け状況によって幅がありますが、一般的には申し出から売却完了までおおむね数ヶ月程度が目安とされています。ただし、競売の入札期間が始まってしまうと任意売却への切り替えができなくなるため、住宅ローンの滞納が続いている場合は、期間に余裕を持って早めに不動産会社や弁護士に相談することが重要です。
まとめ:残債の見通しを立ててから、任意売却か自己破産かを判断する
任意売却は、住宅ローンの滞納という厳しい状況の中で、少しでも自分の意思を反映させながら不動産を手放せる方法です。ただし、売却して終わりではなく、そのあとの残債をどう返済していくか、あるいは自己破産に進むべきかまで見通しておく必要があります。まずは複数の不動産会社に相談し、任意売却でどの程度の金額が見込めるかを把握することが、次の判断の土台になります。
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本記事は株式会社スマートアンドカンパニー編集部が、裁判所(BIT不動産競売物件情報サイト)・国民生活センター・消費者庁の公表資料、および法令(民法・破産法・民事執行法)に関する複数の専門家監修記事を確認して作成しました。制度や運用は変わることがあるため、実際の手続きにあたっては弁護士など専門家に最新の情報をご確認ください。




