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不動産売却で複数の会社に査定を依頼すること(相見積もり)は、失礼ではありません。むしろ宅地建物取引業法は、不動産会社が媒介契約に際して価額について意見を述べるときはその根拠を明らかにしなければならないと定めており、売主が「なぜその価格なのか」を尋ねて各社を比べることは、制度がもともと想定している行為です。この記事では、依頼社数の目安、査定書のどこを見るか、公的データを使った答え合わせ、断り方の文例、そして相見積もりの出口である媒介契約の選び方までを、買取・再販の実務の視点から順に解説します。
この記事の監修
森(宅地建物取引士/埼玉県知事 第046541号)
株式会社スマートアンドカンパニー 専任
執筆:株式会社スマートアンドカンパニー 編集部(収益物件の買取・再販) / 本記事の法令に関する記述は、e-Gov法令検索で条文を確認したうえで記載しています。
大切な資産である不動産だからこそ、納得のいく価格や条件で売り出したいと思うのは当然のことです。それでも「複数社に頼むと角が立つのではないか」「断るときが気まずい」と感じて一社で決めてしまう方は少なくありません。以下では、その不安を一つずつ具体的な手順に置き換えていきます。
不動産売却の相見積もりは失礼?業界の常識を知ろう
不動産売却において、複数の会社に査定や見積もりを依頼することは、不動産業界では日常的に行われている手続きです。多くの売主が、一社だけの判断で売却を決めるのではなく、複数の会社の提案を比較検討しています。そのため、「複数を同時に頼むと失礼ではないか」と過度に気負う必要はありません。
この「比べてよい」という感覚には、制度上の裏づけがあります。宅地建物取引業法第34条の2は、不動産会社が媒介契約に際して売買すべき価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。つまり査定額の根拠を尋ねることは、売主が遠慮して控えるべきお願いではなく、不動産会社の側に課された義務に対応する行為です。「どうしてこの価格になるのですか」と聞かれた会社は、本来それに答える前提で価額を提示しています。
むしろ、一社のみの査定に頼ってしまうことにはリスクが伴います。不動産会社によって、物件の評価基準や得意とするエリア、販売戦略は大きく異なります。一社だけで決めてしまうと、本来得られたはずの適正価格を見逃したり、売却活動の質に差があることに気づけなかったりする可能性があります。相見積もりを行うことは、売主が自身の利益を守るための正当な権利であり、賢明な判断といえます。
ただし、依頼する際には最低限のマナーを守ることが大切です。複数の会社に依頼していることを隠して、あたかも一社だけに頼んでいるかのように振る舞うと、後で発覚した際に信頼関係を損ねる可能性があります。「比較検討のために数社に依頼しています」と最初に伝えておくことで、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
相見積もりは何社が目安?社数別の比較しやすさと連絡の負担
相見積もりで最初に迷うのが「何社に頼めばよいのか」です。結論から言うと、3社前後から始めて、必要に応じて増やすのが扱いやすい進め方です。ただしこの社数に公的な統計や法令上の根拠があるわけではなく、あくまで「比較材料の多さ」と「連絡対応の負担」が釣り合う範囲としての目安です。
| 依頼社数 | 得られる比較材料 | 連絡対応の負担 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 1社のみ | 比較対象がなく、提示額が高いのか安いのか判断できない | 最小 | すでに信頼できる会社が決まっている/時間を優先して買取で手放したい |
| 2〜3社 | 価格帯の幅と、根拠説明の丁寧さの差が見えはじめる | 小〜中 | 多くの売主が最初に選ぶ範囲(目安) |
| 4〜6社 | 会社ごとの得意分野(マンション・戸建・収益物件)の違いまで見える | 中〜大 | 物件の種別が特殊/エリアの相場が読みにくい |
| 7社以上 | 材料は増えるが、判断軸が増えすぎて決めきれなくなりやすい | 大 | 特別な事情がなければ、ここまで広げる必要は乏しい |
※上表は比較のしやすさと連絡負担の関係を整理した目安であり、公的統計に基づくものではありません。
大手と地域密着をどう混ぜるか
社数と同じくらい効くのが「どういう会社を混ぜるか」です。全国展開の大手は取引事例のデータ量と広告網が強く、地域密着の会社はそのエリアで実際に動いている買主の顔が見えている、という違いがあります。同じタイプの会社ばかり3社に頼むと、出てくる査定額も根拠も似通ってしまい、比較の意味が薄くなります。大手を1〜2社、地域密着を1〜2社という配分にしておくと、価格の幅と販売戦略の違いの両方が見えます。
物件の種別によって強い会社は変わります。戸建の売却であれば戸建の売却査定はどこがいいかもあわせて確認しておくと、依頼先の当たりをつけやすくなります。
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依頼先の候補を一度に集めたい場合は、一括査定を使うと入力1回で複数社に依頼できます。査定は無料で、依頼した時点で売却が確定するものではありません。
スムーズな査定依頼のためのマナーと準備
相見積もりを行う際、各不動産会社に対して正確な情報を伝えることは、精度の高い査定結果を得るために不可欠です。情報の精度が低い状態で査定を依頼してしまうと、会社側も正確な価格を算出できず、結果として比較検討の材料としての価値が下がってしまいます。
① 伝える物件情報
・物件の所在地(住所)
・土地の面積および建物の延床面積
・築年数と間取り
・建物の構造(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など)
・現在の利用状況(居住中、空き家、賃貸中など)
・売却を考えている時期と、価格と時間のどちらを優先したいか
② 手元にあると査定の精度が上がる書類
次の書類は、訪問査定の前に揃えておくと説明の往復が減ります。すべてが揃っていなくても査定は依頼できますので、あるものから確認してください。
・登記事項証明書(登記簿謄本)または権利証(登記識別情報通知)
・購入時の売買契約書・重要事項説明書
・間取図、測量図、建物図面
・固定資産税の納税通知書(課税明細書)
・マンションの場合:管理規約、長期修繕計画、管理費・修繕積立金がわかる書類
・リフォームや修繕をしていれば、その履歴と見積書・請求書
・土地の境界に関する資料(境界確認書など)
書類が揃っているほど、机上査定と訪問査定の金額差は小さくなります。逆に情報が足りないまま出た机上査定の数字は、訪問査定で下がることが珍しくありません。相見積もりで各社を同じ土俵に乗せるためにも、渡す情報は全社で揃えるようにしてください。A社にだけ管理規約を渡してB社には渡さない、という状態では、そもそも比較が成立しません。
これらの情報をあらかじめ整理して伝えておくことで、不動産会社はより実態に近い査定書を作成できます。また、依頼時には「いつまでに売却したいのか」「どのような条件を重視しているのか」といった希望についても、可能な範囲で伝えておくと良いでしょう。例えば、「価格の高さよりも、早期売却を優先したい」といった要望があれば、会社側もそれに応じた販売プランを提示しやすくなります。
また、査定依頼時には「査定結果をもとに複数社で比較検討する予定です」と一言添えておくのがスマートなマナーです。これにより、不動産会社側も「このお客様は比較検討を行うタイプである」という前提を持って対応できるため、無理な営業を抑えたり、より具体的な根拠に基づいた提案を用意したりといった配慮が生まれやすくなります。
机上査定・訪問査定・鑑定評価の違い|相見積もりでどれを使うか
「相見積もりに費用はかかるのか」という不安をよく聞きます。不動産会社が行う査定は無料です。有料になるのは、不動産鑑定士が行う「鑑定評価」という別の業務で、相見積もりの場面で使うことはまずありません。三者の違いを整理します。
| 種類 | 実施者 | 費用 | 所要時間の目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 机上査定 (簡易査定) | 宅地建物取引業者 | 無料 | 依頼から数日 | まず相場感をつかむ/訪問査定を頼む会社を絞り込む |
| 訪問査定 | 宅地建物取引業者 | 無料 | 現地1時間前後+報告まで数日 | 実際の売り出し価格を決める |
| 鑑定評価 | 不動産鑑定士 | 有料 | 依頼内容による | 相続・離婚・裁判など、第三者に示せる根拠が必要な場面 |
机上査定と訪問査定は、どちらも媒介契約を得るための営業活動の一環として無料で行われます。一方の鑑定評価は不動産の鑑定評価に関する法律に基づく専門業務で、不動産鑑定士が行います。同じ「不動産の価格を出す」行為でも、根拠となる制度も、その数字が持つ意味も別物です。
なお「見積もり」と「査定」という言葉の使い分けについては、不動産売却の「見積もり」と「査定」の違いで詳しく整理しています。本記事は相見積もりの設計と実行、そちらは用語と手続きの違いという役割分担です。
査定額の数字だけで判断しない!プロが教える比較の視点
相見積もりを行う最大の目的は、単に「一番高い査定額を出した会社を選ぶこと」ではありません。査定額の数字そのものよりも、「なぜその価格になったのか」という根拠と、その後の「販売戦略」の質を比較することこそが重要です。
比較を行うときは、提示された金額ではなく査定書の中身を並べてください。次の表を手元に置いて、各社の査定書に印をつけていくと差が見えます。
| 確認項目 | 確認できていれば良い状態 | 注意したい状態 |
|---|---|---|
| 価格の根拠 | 成約事例か売出事例かが区別され、件数と自宅との類似点(築年・面積・階数など)が示されている | 「周辺相場から」とだけ書かれ、事例そのものが示されない |
| 補正の説明 | 階数・方角・築年数・管理状態をどう加減したかが金額で説明されている | 補正の内訳がなく、結論の金額だけが書かれている |
| 販売計画 | 想定する買主層、使う媒体、掲載を開始する時期が具体的に書かれている | 「頑張ります」「弊社のお客様にご紹介します」で終わっている |
| レインズ登録と広告 | 媒介契約の種類ごとの登録の扱いと、広告の出し方が説明されている | 登録や広告の話が出てこない |
| 価格変更の考え方 | 反響が出なかった場合の見直し時期と、下げ幅の考え方が示されている | 売り出し価格の話しかなく、その後の計画がない |
| 報告の頻度と方法 | 契約の種類に応じた報告頻度と、連絡手段(電話・メール)が決まっている | 「随時ご連絡します」のみ |
| 担当者 | 宅地建物取引士かどうか、そのエリアでの担当歴が確認できる | 名刺や査定書から資格・経験が読み取れない |
補正の説明については、階数や方角や管理状態が査定額にどう反映されるのかをマンション査定は階数でいくら変わる?で具体的に整理しています。各社の補正が妥当かを判断する物差しとして使えます。
高い査定額を提示していても、その根拠が曖昧であったり、売却活動の具体的なイメージが湧かなかったりする会社には注意が必要です。 逆に、査定額が少し控えめであっても、市場動向に基づいた論理的な説明があり、現実的な販売戦略を持っている会社のほうが、結果として納得のいく条件で売却できることもあります(売却の結果は物件の状態・立地・市況によって異なります)。数字の裏側にある「提案力」を見極めることが、相見積もりの真の価値です。
査定額の妥当性を自分で確かめる|公的データで答え合わせする手順
各社の査定額が出そろっても、「どれが実態に近いのか」は素人には判断しづらいものです。しかし実際には、売主自身が無料で使える公的データがあります。各社の数字をこの幅の中に置いてみると、突出して高い・低い会社がどこなのかが自分の目で分かります。
ステップ1:実際の取引価格を見る
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際に成約した不動産の取引価格を無料で検索できます(不動産価格情報)。売り出し中の物件価格は「売主の希望額」ですが、ここで見られるのは実際に売買が成立した価格です。自宅周辺・同程度の面積・近い築年で数件を拾い、価格の帯を把握してください。
ステップ2:市況の向きを見る
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の不動産市場動向(統計)では、月ごとの成約件数・在庫件数・平均価格が「月例マーケットウオッチ」として公表されています。同じ査定額でも、在庫が増えて成約が減っている局面と、その逆の局面とでは「売れるまでの時間」がまったく違います。市況の数値を見るときは、対象月と発表機関を必ず確認してください。
注意:東日本レインズの月例データは首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)が対象です。指定流通機構は東日本・中部圏・近畿圏・西日本の4つがあり、それぞれが同種の統計を公表しています。首都圏以外の物件は、同ページ内の「他の指定流通機構が公表している統計資料」から、ご自身のエリアに対応する機構のデータを確認してください。
ステップ3:各社に理由を尋ねる
1と2で掴んだ幅に対して、明らかに上振れ・下振れしている会社があれば、その理由を質問します。前述のとおり価額の根拠を明らかにすることは不動産会社の義務ですから、この質問は遠慮の対象ではありません。納得できる説明が返ってくるか、それとも話をそらされるかが、そのまま担当者を選ぶ材料になります。
査定の考え方そのものを体系的に知りたい場合は、不動産流通推進センターの「価格査定マニュアル」の解説ページが参考になります(マニュアル本体は宅地建物取引業者向けの有料の年間登録サービスで、売主が無料で閲覧できるものではありません)。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」でも、価額の意見の根拠としてこのマニュアルや取引事例が挙げられています。
相見積もりされる側から見た本音|仲介の査定額と買取価格を同時に比べる
ここまでは売主側から見た相見積もりの話でした。査定を出す側、つまり不動産会社の内側から見るとどう映るのかを、収益物件の買取・再販を手がける株式会社スマートアンドカンパニーの立場から書きます。
比較されている前提で査定書は作られている
まず率直に言うと、売主が複数社に依頼していることは、業者側はほぼ前提として織り込んでいます。隠されていても、話の進み方や質問の内容でおおよそ分かるものです。だからこそ「他社にも頼んでいます」と最初に伝えることに、業者側が気を悪くする要素はほとんどありません。
むしろ実務上はっきり違いが出るのは、根拠の説明を求められると分かっている案件かどうかです。事例の選び方や補正の内訳をきちんと聞かれる前提の相手には、説明資料の作り込みが変わります。逆に「お任せします」と言われた案件は、資料が簡素になりがちです。査定書の質は、売主が何を聞くかによってある程度動きます。
仲介の査定額と買取価格は、そもそも意味が違う
相見積もりを取るときに見落とされがちなのが、仲介の査定額と買取価格は性質の異なる数字だという点です。
| 仲介(媒介)の査定額 | 買取価格 | |
|---|---|---|
| 数字の意味 | その価格で売り出せる見込みがある、という見立て | 業者が自ら買うと約束できる金額 |
| 成約するかどうか | 買主が現れなければ成約しない(価格変更もありうる) | 合意すればその金額で成立する |
| 引渡しまでの期間 | 買主探しから始まるため読みにくい | 短くしやすく、時期の調整も相談しやすい |
| 内覧 | 必要(複数回になることもある) | 原則として業者の現地確認のみ |
| 価格の水準 | 買取より高くなることが多い | 再販時の経費とリスクを見込むため、仲介の査定額より低くなるのが一般的 |
この2つを同時に取ると、価格帯の下限と上限を同時に把握できます。買取価格は「これ以下では手放さなくてよい」という床になり、仲介の査定額は「うまくいけばここまで届く」という天井になります。片方しか取らないと、自分がどのくらいの幅の中で判断しているのかが見えません。
なお買取価格が仲介相場の何割になるかは、物件の種別・立地・築年数・再販の見通しによって大きく変わるため、一律の比率で示すことはできません。数字を知りたい場合は、実際に買取査定を取って比べるのが確実です。
どちらを選ぶかは「価格」と「時間」のどちらを優先するか
結局のところ判断軸はここに集約されます。少しでも高く売りたいなら仲介、期限が決まっている・内覧の負担を避けたいなら買取、という整理です。相見積もりの段階で両方の数字を持っておくと、この選択を感覚ではなく金額差で判断できます。
断り方のマナー:依頼しない会社への適切な対応
複数の会社から査定結果を受け取った後、「今回はこの会社に依頼しない」と決めた場合、その連絡をどうすべきか悩む方は多いものです。結論として、依頼しないと決めた会社には、感謝の気持ちを伝えた上で、早めに断りの連絡を入れるのがマナーです。
連絡をせずに放置してしまうと、不動産会社側は「検討中なのか」「連絡がつかないのはどうしてか」と状況を確認するために、電話やメールを繰り返し送ってくることがあります。これが売主にとって心理的な負担となり、ストレスを感じる原因にもなりかねません。誠実な対応として、決断ができ次第、速やかに意思表示を行うことがお互いにとって最善です。
断りの連絡をする際は、以下のポイントを意識しましょう。
・感謝の言葉を伝える(時間を割いて査定してくれたことに対して)
・結論を明確に伝える(「今回は見送る」という意思)
・理由は簡潔にする(詳細な理由を述べる必要はない)
断り文句に困ったときは、「検討の結果、今回は他の不動産会社にお願いすることにいたしました」と伝えるだけで十分です。無理に「価格が高すぎたから」といったネガティブな理由を詳しく説明する必要はありません。丁寧かつ簡潔に伝えることが、プロ同士のコミュニケーションとしても適切です。
そのまま使える断りの文例3パターン
① メールで断る場合(机上査定のみ受けた会社へ)
このたびは査定をご対応いただきありがとうございました。各社のご提案を比較検討した結果、今回は別の会社にお願いすることといたしました。
お手数をおかけしましたが、何卒よろしくお願いいたします。
② 電話で断る場合(短く伝えたいとき)
先日は査定をありがとうございました。検討の結果、今回は他社にお願いすることにいたしました。ご丁寧に対応いただいたのに恐れ入ります。ありがとうございました。
③ 訪問査定まで受けた会社へ
先日はご来訪いただき、また詳しい査定書までご用意いただきありがとうございました。ご提案の内容は大変参考になりましたが、検討の結果、今回は別の会社に依頼することといたしました。
お時間を割いていただいたにもかかわらず申し訳ありません。またご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
電話とメール、どちらで伝えるか
実務的には、記録が残るメールを基本にするのが無難です。言った・言わないが残らず、送った時点で意思表示が完了するためです。ただし訪問査定まで受けた相手や、担当者が時間をかけて資料を作ってくれた相手には、電話で一言伝えるほうが後味がよく済みます。電話が苦手であれば、③の文例のように「お時間を割いていただいたのに」の一文を足したメールで十分に丁寧です。
断る時期は、依頼先を決めた時点でできるだけ早くが原則です。返事を保留したままにすると、相手は見込み客として追い続けるため、結果的にお互いの負担が増えます。
電話が苦手・断るのが苦手な人の相見積もり手順
ここまで読んで「理屈は分かったが、営業電話が来ると思うと踏み出せない」と感じた方へ。相見積もりは、連絡の受け方を先に設計しておくと負担を下げやすくなります。次の4段階で進めてください。
手順1:まず匿名・登録不要の概算で相場感をつかむ
いきなり会社に連絡する前に、個人情報を渡さずに使える概算ツールで自分の物件の目安を掴んでおきます。数字の見当がついていれば、その後の会話で主導権を保ちやすくなります。電話なしで使える匿名のAI査定や、登録不要のマンション査定シミュレーションを先に試しておくと、この段階では営業連絡は発生しません。
手順2:依頼時の備考欄に連絡方法の希望を書く
査定を依頼するときの備考欄・要望欄に、「連絡はメールでお願いします」「電話は平日18時以降にお願いします」と明記します。ここを空欄にすると、多くの会社は電話から入ります。書いておけば、その希望をふまえて連絡してくる会社が多くなります。ただし対応は会社ごとに異なり、査定に必要な確認のために電話が入ることはあるため、電話がゼロになるとは限りません。それでも、書いておくかどうかで最初の連絡の入り方は変わります。
手順3:机上査定で3社前後に絞り、訪問査定は2社程度に
会社との接触が濃くなるのは訪問査定からです。机上査定の段階で説明の丁寧さや反応の速さを見て絞り込み、実際に会うのは2社程度に留めれば、断る相手も自然に減ります。
手順4:断りはメールで短く
前章の文例①をそのまま使ってください。理由を詳しく書く必要はありません。送信した時点で意思表示は完了しています。
それでも直接のやり取りが難しいという場合には、代行という選択肢もあります。
一部の一括査定サイトでは、「お断り代行サービス」を提供している場合があります。これは、ユーザーに代わってサイト側が不動産会社へ断りの連絡を入れてくれる仕組みです。断りの連絡を自分で入れるのが難しいと感じる場合には、負担を減らす手段になります。
ただし代行してもらえるのは「断りの連絡」だけです。一括査定に申し込んだ時点で各社に情報は渡るため、最初の連絡そのものを止める仕組みではありません。営業の連絡をそもそも発生させたくない場合は、この節の手順1で挙げた匿名・登録不要の概算から始めてください。
ただし、すべてのサイトがこのサービスを提供しているわけではありません。利用する前に、そのサイトがどのようなサポート体制を持っているかを確認しておくことが大切です。また、代行サービスを利用する場合でも、査定結果の内容自体は自分でしっかりと確認し、納得した上で判断を下すというプロセスは省略できません。ツールを賢く活用しながら、ストレスのない売却活動を目指しましょう。
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依頼時の備考欄に連絡方法の希望を書いておくと、メールを中心に対応する会社もあります(対応は会社によって異なります)。査定は無料で、依頼した時点で売却が確定するものではありません。
相見積もりの後:媒介契約3種の選び方と契約後の見直し
依頼する会社を決めたら、次は媒介契約を結びます。相見積もりの出口にあたる部分で、ここを知らずに勧められるまま署名してしまう方が少なくありません。契約は3種類あり、レインズ(指定流通機構)への登録や報告の頻度が法令で決まっています。
| 契約の種類 | 他社との併用 | 自分で買主を 見つけたとき | レインズ登録 | 報告の頻度 | 有効期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | できる | 直接契約できる | 法律上の登録義務はない | 法律上の定期報告の義務はない(申込みがあったときの報告義務は3種すべてにある) | 法律上の期間の定めはない |
| 専任媒介 | できない | 直接契約できる | 契約日から7日以内(休業日は数えない) | 2週間に1回以上 | 3か月以内 |
| 専属専任媒介 | できない | できない(会社を通す) | 契約日から5日以内(休業日は数えない) | 1週間に1回以上 | 3か月以内 |
根拠は宅地建物取引業法第34条の2および同法施行規則第15条の10です。専任媒介・専属専任媒介の有効期間が3か月を超えられないこと、定期報告の頻度、レインズへの登録期間は、いずれも法令が定めた最低限のルールで、これに反する特約は無効とされています(同法第34条の2)。なお、買主から購入の申込みがあったときに遅滞なく売主へ報告する義務は、一般媒介を含むすべての媒介契約に課されています。
どれを選ぶか
一般媒介は複数社に同時に依頼できるため競争が働きやすい反面、どの会社も「自社で決まるとは限らない」と考えるため、広告費のかけ方が慎重になることがあります。専任系は1社に絞るぶん責任の所在がはっきりし、報告義務も法律で担保されます。売れやすい物件なら一般媒介、時間や手間がかかりそうな物件なら専任系という選び方が一般的な目安です。
契約後も見直せる
ここが最も知られていない点です。専任媒介・専属専任媒介の有効期間は3か月が上限で、更新には依頼者の申し出が必要です。つまり期間が満了すれば、自動的に縛られ続けることはなく、会社を変える判断ができます。相見積もりで選んだ1社が期待と違ったとしても、そこで売却そのものを諦める必要はありません。断ることへの不安が大きい方ほど、この「3か月で見直せる」という設計を知っておくと気持ちが軽くなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 査定額が一番高かった会社を選べば、高く売れるのでしょうか?
A. 必ずしもそうとは限りません。高い査定額を提示する会社の中には、契約を取るためにあえて高めの数字を出しているケースもあります。重要なのは金額の高さだけでなく、「なぜその価格になるのか」という根拠や、実際に売却するための具体的な戦略が伴っているかどうかです。価格と提案力のバランスを見て判断することをおすすめします。
Q. 断りの連絡は電話で行うべきですか?メールでも大丈夫ですか?
A. どちらの方法でも問題ありません。実務的には、記録が残るメールを基本にすると確実です。ただし訪問査定まで受けた相手や、担当者が時間をかけて資料を作ってくれた相手には、電話で一言伝えるか、時間を割いてもらったことへのお礼を添えたメールを送ると丁寧です。
Q. 相見積もりをしていることを不動産会社に隠してもいいですか?
A. 隠す必要はありません。むしろ、最初から「比較検討のために複数社に依頼している」と伝えておく方がスムーズです。隠したまま進めてしまい、後から「実は他にも頼んでいた」と判明した場合、担当者との信頼関係が崩れてしまい、その後の売却活動において適切なサポートが得られにくくなるリスクがあります。
Q. 相見積もりは何社くらいが目安ですか?
A. 3社前後から始めるのが扱いやすい目安です。比較材料が得られる一方で、連絡対応の負担が過大にならない範囲だからです。ただしこの社数に公的な統計や法令上の根拠があるわけではありません。物件の種別が特殊な場合や相場が読みにくいエリアでは、4〜6社に広げて会社ごとの得意分野の差を見る方法もあります。
Q. 相見積もりに費用はかかりますか?
A. 不動産会社が行う机上査定・訪問査定はいずれも無料です。これは媒介契約を得るための営業活動の一環として行われるためです。有料になるのは不動産鑑定士が行う「鑑定評価」で、これは不動産の鑑定評価に関する法律に基づく別の専門業務です。相続や裁判など第三者に示す根拠が必要な場面で使うもので、通常の売却の相見積もりでは必要ありません。
Q. すでに1社の訪問査定を受けた後から、他社に依頼してもよいですか?
A. 媒介契約を結ぶ前であれば問題ありません。査定を受けたこと自体に契約上の拘束力はないためです。ただし後から依頼する会社にも、先に渡したのと同じ情報・書類を揃えて渡してください。前提が揃っていないと査定額の差が物件の評価によるものか情報量の差によるものか判別できず、比較の意味が薄れます。
Q. 媒介契約を結んだ後でも、他社に変えられますか?
A. 一般媒介であればもともと複数社と契約できます。専任媒介・専属専任媒介の場合も、有効期間は宅地建物取引業法で3か月が上限と定められており、更新には依頼者の申し出が必要です。したがって期間が満了した時点で会社を見直すことができます。期間の途中での解除については契約書の定めによるため、締結前に解除の条件を確認しておいてください。
まとめ:マナーを守って納得のいく不動産売却を
不動産売却における相見積もりは、決して失礼な行為ではなく、むしろ納得のいく売却を実現するために欠かせないステップです。複数の会社から査定を受けることで、市場価値を多角的に把握でき、より精度の高い販売戦略を選ぶことができます。大切なのは、単に金額だけを見るのではなく、各社の提案内容や根拠、そして担当者との相性を冷静に見極めることです。
また、依頼時の正確な情報伝達や、断る際の誠実で迅速な対応といったマナーを守ることで、不動産会社との良好な関係を保ちながら進めることができます。もし営業の対応に不安を感じたり、断るのが難しかったりする場合は、備考欄で連絡方法を指定する、匿名の概算から始めるといった手順で負担を下げられます。
この記事の要点
・相見積もりは失礼ではない。価額の根拠を明らかにすることは宅地建物取引業法が不動産会社に課した義務であり、根拠を尋ねるのは正当な行為
・社数は3社前後が扱いやすい目安。大手と地域密着を混ぜると比較の質が上がる
・比べるのは金額ではなく査定書の中身(根拠・補正・販売計画・報告体制)
・不動産情報ライブラリとレインズの月例データで、査定額の妥当性は自分で確かめられる
・仲介の査定額と買取価格を同時に取ると、価格帯の下限と上限が同時に見える
・断りはメールで短く。訪問査定を受けた相手には一言添える
・専任媒介・専属専任媒介は3か月が上限。契約後も見直せる
不動産査定にまつわる周辺の疑問は不動産売却のポイント|価格・会社選び・媒介契約の判断基準もあわせてご覧ください。
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この記事の手順で比較を進めたい方は、まず複数社の査定額を集めるところから始められます。査定は無料で、依頼した時点で売却が確定するものではありません。
マンション売却の内覧|準備・掃除・当日対応・件数目安の完全ガイド
監修:森(宅地建物取引士/埼玉県知事 第046541号)/株式会社スマートアンドカンパニー 専任
執筆:株式会社スマートアンドカンパニー 編集部(収益物件の買取・再販)
本記事は上記監修者のレビューを経て公開しています(監修日:2026年8月8日)。記載の社数・期間・価格の水準はいずれも一般的な目安であり、実際の条件は物件の状態・立地・市況によって異なります。個別の契約条件や税務の取り扱いについては、宅地建物取引業者・税理士など専門家にご確認ください。
参照した一次情報:宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)/宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)/不動産の鑑定評価に関する法律(e-Gov法令検索)/国土交通省 不動産情報ライブラリ/東日本不動産流通機構 マーケットデータ/不動産流通推進センター/日本不動産鑑定士協会連合会