マンション売却査定後に不具合があったら費用は発生するの? 

不動産会社の選び方

マンション売却査定依頼から査定後について


中古マンションを売却しようと考えた時、まず始めに、売却査定を依頼するのが一般的で、その際は、ネットの売却査定を依頼できるサイト等を利用し、5~6社の不動産会社に売却査定を依頼します。
そして、その売却査定額や営業マンおよび不動産会社の対応等をよく観察した上で、不動産会社を選びマンションを売却する為の仲介契約を結ぶのが一般的でしょう。

こうした手続きを経て、いよいよ、売却査定額を基に、マンション売却の仲介を依頼した担当営業マンとよく相談し、売出価格を決定して、マンションの販売活動が開始されます。その地域のマンション市場を適切につかみ、販売活動をしていれば、そのうちマンションの内覧希望者も現れ、内覧を行うようになっていきます。そして無事売却契約までたどり着き、購入者にそのマンションを引き渡し、無事売却完了!! めでたし、めでたし…で終了するというのが理想的な形です。

ところが、売却査定の時には、売主も気付かず、マンションを買主に引き渡す時にも、なんの問題もなく引き渡したはずなのに、買主から 「購入したマンションに不具合を見つけたので、それを直す為の費用を負担してほしい。」と連絡が入る場合があります。
もし、こんなトラブルの連絡が入れば、無事マンションを売却出来た喜びなど一気に消え、その日から、費用はどのくらい請求されるのか…などと悩み、心配な日々を過ごすことでしょう。
出来ればこんな、連絡を受けたくはないものです。
こういったトラブルに余計な費用や時間をかけない為に、このような事態について、情報を集め、余計な費用が掛からないで済む賢い対応について、考える材料を集めてみましょう。

そもそも、マンションの売却査定時には、不動産の専門家が、実際にそのマンションをよく見た上で売却査定額を算出しているわけです。その時、売主本人も気付かない不具合、もちろん売却査定した営業マンも気付かなかったような不具合があるとはどういうことでしょうか? 因みにこういった不具合を「隠れた瑕疵」といい、これに対し売主が負う責任を“瑕疵担保責任”と言います。
瑕疵担保責任とは、簡単に言うと、「物件を引き渡した後に、売り主が気付かなかった欠陥や不具合が見つかった際に、売り主が責任をもって対応しましょう」という内容です。
しかし一方で、売主が個人の場合(仲介業者に依頼している個人も含む)、売主が業者である場合と同じ負担では、負担があまりにも重いため、「瑕疵担保責任を負わない」と契約文書に明記することも、実は可能です。
とは言っても、瑕疵担保責任の範囲は、どのようなものか、一応確認しておきましょう。
瑕疵担保責任の範囲とは何でしょう。それは、「引き渡すまで気付かなかったけれど、隠れた瑕疵があった」という場合を指し、この場合に限った、不具合を言います。

つまり、売却査定から内覧、売買契約を経て無事売却された後の“全て”の不具合に、対応しなくてはいけない、ということではありません。あくまでも、“隠れた瑕疵”が対象となります。
では、瑕疵というあまり耳にしない言葉は、どのようなことを指す言葉でしょうか。瑕疵とは、「住宅として住むために必要な品質や性能を欠いている状態」を言い。言い替えれば、「そのままでは住めない状態。」を指します。
また、負担責任を問われる「隠れた瑕疵」とは、どういうことを意味するのでしょうか。 それは、先にも述べたように、売却査定時に売主自体も知らず、また、売買契約を結んだ時点で、買主が知ることが出来なかった不具合です。
つまり、内覧時や売買契約時までの様々な手続き迄に知らされていた不具合や、ちょっと注意して見たら気付く傷、経年劣化による付帯設備の故障は、「隠れた瑕疵」に該当しないのです。

瑕疵(=不具合)があったこと知って契約しているのなら買主責任であり「内覧でよく見ていなかった」とか「こんなに早く壊れるとは思わなかった」とかいうのは認められません。
また判例でも、中古マンションの売却においては、「現状有姿渡し」が原則であると言われています。
つまり、中古マンションの売却では、売却後の不具合に対する費用負担は、ほぼ、発生しないと考えていいのです。 
さらに、瑕疵担保責任は、売主と買主によって決めることが出来る「任意規定」です。

したがって、売却査定後、心配のある人は、
・売主責任を負う期間(責任期間)
・どの欠陥まで責任を負うか(責任範囲)
・責任を一切負わないとする(免責)
について自由に決め、契約書に明示することも出来ます。

また、契約書に「現状有姿」で引き渡すと記載があれば、「引き渡し状態のまま」という確認が出来ていることになりますので、その後の不具合に関しても責任を追及されることはありません。
ただし、注意が必要なのは、「瑕疵担保責任の免責」を堂々と明記することで、売値をたたかれる恐れがある事も考慮の上、どの方法をとるかはご検討ください。

売却査定後に見つかる瑕疵(=不具合)の費用負担について


売却査定後に見つかる瑕疵(=不具合)の費用負担について、よくある事例も含め見ておきましょう。
売却査定からはじまり、売買契約の手続きを経て、売却された中古住宅において、この瑕疵担保責任が問われるのは主に以下の5つです。

1.雨漏り
2.白アリ
3.建物構造部の欠陥・腐食
4.境界線の不備
5.土地の埋設物

このうち、集合住宅である中古マンションの場合、4.の境界線の不備、5.の土地埋設物は、瑕疵担保責任の範囲外となるのが一般的です。
また、マンションで、木造というケースも考えられませんので、2.の白アリ被害についても範囲外と考えていいでしょう。
そして、1.の雨漏り や 3.の建物構造部の欠陥・腐食 についいても、マンションの場合、責任を負うのは専用部分だけであり、共用部分については管理組合の負担になりますので、売主の費用負担が発生するということはまずないと考えられます。
実際に、マンションの場合、一戸建てと比較すると、上記に示した瑕疵担保責任に問われる欠陥は少なく、責任外と判断される場合が多いので心配はありません。

隠れた瑕疵として、瑕疵担保責任を問われるような事例


売却査定時に気付かなかった、不具合で、隠れた瑕疵として、瑕疵担保責任を問われるような事とは、どのようなものがあるのでしょうか。
その事例を見てみましょう。

事例1.買主に、マンション引き渡し後すぐに、買主から、フローリングの傷に気付いたので売主に修理費用を負担して欲しい、と連絡が入ったという事例です。

この場合、中古マンションという特性から、売主が今までずっと住んでいたマンションであることは言うまでもありません。ですから、内装の傷や汚れは「当然あるもの」として考えなくてはなりません。だからこそ、中古マンションは新築マンションより安い価格で売買されます。
これらのことから、この事例については、隠れた瑕疵には当たらず、売主は修理費を負担する必要はありません。
誰もが「このままでは住めない」と感じる状態でなければ損害賠償や契約解除は認められないのです。特に解約は、「瑕疵が極めて重大で補修しても住めない場合」でないと認められません。

事例2.売却査定を済ませ無事売却した、築20年のマンションの給湯器から、お湯が出なくなったので修繕費用を売主に負担して欲しいというもの。
この事例も「隠れた瑕疵」にはあたりません。経年劣化による付帯設備の故障は隠れた瑕疵とはいえません。築年数に応じてそれなりに老朽化しているのが当たり前と考えられる為です。一般に給湯器の寿命は10年前後と言われています。築20年という歳月がたっているなら、そのマンションに取付られている設備などは、「今故障してもおかしくない」と考えなくてはいけません。ですので、これも費用負担は発生しません。

事例3.玄関のドアの故障が発生したので、この対応について費用を負担して欲しいという要求。
この事例は、実はマンションの場合、玄関ドアは共用部の為、管理組合が補修します。売主の費用負担の必要はありません。

事例4.売主によってリフォーム工事されていた箇所の不具合について、購入前のリフォームなので費用負担して欲しいという件。
この事例では、不具合箇所は、リフォーム会社が負う責任の為、売主が責任を負う必要はないのです。
このように、今まで、一緒に確認した事例からは、売主が費用負担する事例は、ありませんでした。
ですので、中古マンションの売却は不具合があとから起こっても費用は発生しません。