中古マンション売却査定のポイント(189)オーバーローンの基礎知識

中古マンションを売却しようと査定を依頼したものの、査定額が出てショック…! 査定額より住宅ローンの残債のほうが大きかったというケースもあります。
そんな売却額より住宅ローンの残債が多いことを「オーバーローン」と言うのですが、オーバーローン状態で中古マンションの売却を行っていいものかどうか悩む方もいるのではないでしょうか。

そこで今回はオーバーローンで中古マンションを売却するときのポイントと注意点をご紹介したいと思います。
査定額を見てオーバーローンであることにガッカリしている方、まだ査定をしていないけれどオーバーローンだった場合に備えてオーバーローンについて知っておきたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

オーバーローンになりがちなケースとは?


都心で駅近など条件が良いマンションでもない限り、一般的にマンションを含む家の価格は年数が経つにつれて購入したときよりも下がっていくものです。
新築で購入したマンションも数年経ってから売却しようとすると、ほとんどの場合で購入時の価格よりも査定額・売却額が下がってしまいます。

また住宅ローンについてもローンが出る速さよりもマンションの価格が下がる速さのほうが早いです。
そのため頭金を出さずに住宅ローンをフルで組んでマンションを購入した場合は、いざマンションを中古になってから売却しようとすると、オーバーローンになってしまう可能性が高いと言えます。「頭金がないけどまあ借りられるからいっか」とフルローンでマンションを購入した方は要注意です。

オーバーローンかどうかは中古マンションを売却する際に大事な要素となるので、フルローンで購入した人に限らず、売却を考えているのであれば、あらかじめ不動産会社で査定をしてもらって査定額から売却額がどれくらいになるのかを調べておくといいでしょう。

その際、複数の不動産会社に査定を依頼すると、マンションの売却額の相場がわかります。自分で査定を依頼する不動産会社をいくつもピックアップするのは面倒なので、複数の不動産会社に一括で査定を依頼できる一括査定サイトを利用してみるのがおすすめです。複数社の査定額を比較できて便利ですよ。

オーバーローン時の中古マンションのベストな売却方法と注意点は?


査定をしてもらったところ、残念ながらオーバーローン状態だった…という場合、「こんな状態でマンションを売却できるのかな?」と不安に思う方もいると思います。
結論から言うと、それでも中古マンションを売却することは可能です。

「でも中古マンションを売却しても住宅ローンの残債があったら抵当権を外してもらえないから、売却はできないんじゃ…」と思うかもしれませんが、売却額だけで住宅ローンが完済できなくても、残りの金額を貯金から出して完済することができれば、抵当権は外してもらうことができます。

またそれ以外でも、中古マンションの売却額を住宅ローンの残債から省いた残額を、住み替えのために新たに購入する物件の金額と合算してローンを借り換える「住み替えローン」を使うことによって抵当権を外すことも可能です。
抵当権を外すことができれば、オーバーローンでも問題なく中古マンションを売却することができます。

「もっと具体的にどうすればよいか知りたい」「住み替えローンについて詳しく相談したい」という場合には、査定をお願いするときに不動産会社に聞いてみるといいでしょう。

しかし住み替えローンを利用する場合には、借金である住宅ローンを借金で返済しているということになるので、その点は注意しいたいところです。
抵当権を外して中古マンションを売却できるとは言っても、住宅ローンがさらに増えている状態なので、状況的には厳しいと言えます。
住み替えローンを利用する際の審査も厳しいので、誰もが気軽に利用できるものでもありません。人によっては利用できないこともあるので注意しましょう。

オーバーローンの状態でのベストな中古マンションの売却方法は、やはり売却額プラス手持ちの現金と合わせて完済するというのが基本となります。
借金が増える原因にもなる住み替えローンについては極力使わず、売却額と手持ちの現金を合算して完済できるように心がけましょう。

オーバーローンのときに使える特例とは?
中古マンションの売却額と住宅ローンの残高の差額に関して、「損失」として給与所得と損益通算が可能になるという特例=「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」というものも存在します。なんだか長い名前で難しそうな響きですね…。

簡単にこの特例を受けるメリットを説明すると、税金が還付されるということです。給与所得にて支払っている源泉徴収税の額が還付されます。
「税金が戻ってくるなんてありがたい」と思いますよね。ではこの嬉しい特例を受けるための条件を見ていきましょう。

まず売却する中古マンションが居住用財産であることが挙げられます。居住用財産とはどういうものかという点については、国税庁のサイトに詳しく説明されているので、一度目を通してみましょう。

また他にも、中古マンションの譲渡契約を結んだ前日における借入金残高があることや現に自分が住んでいる住宅であること、繰越控除する核燃分の合計所得金額が3,000万円以下であること、買い替えは要件ではないことなどいくつかの条件が設定されています。
これについても、国税庁のサイトで詳しく説明されているので、自分が該当するかどうか調べてみてください。

なお特例を受けて繰越控除ができるのは、3年間となっているので注意しましょう。
そして特例を受けることが可能な損失には限度額があります。
繰越控除限度額の計算方法は、「住宅ローン残債-中古マンションの譲渡価額」です。中古マンションの売却額で返済しきれなかった住宅ローンの残りの金額が繰越控除限度額となります。

特例の上と損失の計算例を具体的に見てみましょう。
たとえば住宅ローンの残高が5,000万円で、中古マンションの売却額が2,500万円だった場合、「売却額2,500万円-住宅ローン残高5,000万円=譲渡損失2,500万円」となり、2,500万円が給与所得と損益通算可能になります。

給与所得からこの譲渡損失を引いた額がマイナスになるので、本来の源泉徴収された税額では税金を払いすぎているということになるため、多く払いすぎた税金が戻ってくる仕組みです。
オーバーローンであることは悲しいですが、損失として処理され税金が戻ってくるというのは、救いがありますよね。

ちなみにこの特例を受けるには、確定申告をすることが必須です。必要な書類を揃えて確定申告することを忘れないようにしましょう。

住宅ローンの毎月の返済に困っているときの最終手段は?


最後に、住宅ローンの返済をするのが厳しくなってしまった…という人のための情報をご紹介します。
「毎月のローン返済が困難になってしまったから中古マンションを売却せざるを得ない」という場合の最終手段として、任意売却という道があります。
毎月の住宅ローン返済が行き詰まり、銀行から「マンションを売却してください」と言われた場合が対象です。

任意売却をすると、通常の売却価格より安くなってしまうリスクがあるので、たとえオーバーローンであっても、毎月のローン返済ができている場合は利用しないように注意しましょう。
任意売却は毎月のローン返済ができなくなったときの最終手段と心得ておいてください。

以上、オーバーローンの場合に中古マンションを売却する方法と注意点をご紹介してきました。
オーバーローンであっても売却は可能であること、住宅ローンの残債は売却額と手持ちの現金を合算して完済するのが基本であること、税金の還付を受けられる特例があることを覚えておきましょう。