相続したアパート経営を成功させる方法 売却した方がいいかの判断基準は?

相続した不動産売却のポイント

親の経営していた賃貸アパートを相続して「このまま経営して成功するのか」「処分したい場合はどうしたらいいのか」と悩む方は非常に多くいます。今回は相続したアパート経営について、不動産会社のスマートアンドカンパニーが解説します。以下を知りたい方向けの記事です。

・相続築古アパートの経営戦略の立て方
・経営か売却かの判断基準
・相続放棄した方がいいケース

アパートを相続した場合の4つの選択肢そのものについては、以下のガイドもあわせてご覧ください。

築40年築50年アパートを相続する場合の4つの選択肢

相続したアパート経営を成功させるためにやること

アパート経営は事業のため、常に収支を意識しておく必要があります。毎月出ていく金額が多く家賃収入が少なければ、早期の破綻は目に見えています。支出より収入が上回りキャッシュフローがプラスの状態であれば、急な修繕や税金の支払いに充てることができ、経営が成り立ちます。

相続した時点でアパート経営の状態が良く満室状態であっても、建物は年数が経つにつれて修繕費用がかかるようになります。設備が古くなると人気がなくなり空室が増えるため、計画的な経営が必要です。すでに空室が多い築古アパートを相続した場合は、まず空室を埋める対策を考えましょう。ただしリフォームや修繕は費用をかけすぎると経営が立ちゆかなくなるため、費用と効果のバランスを取ることが大切です。

入居者のターゲットを設定する

相続アパートの空室対策として、まずは入居者のターゲットを設定しましょう。賃貸物件の供給が増えている現状では新しいアパートに人気が集まるため、築古アパートは家賃の安さ以外に新築物件にない特徴が必要です。

ターゲットの設定は例えば以下のようなものが考えられます。

働く女性向け/学生向け/ペットを飼いたい人向け/生活保護受給者向け/外国人向け

アパートの立地やもとの広さなど特性を踏まえたうえで絞り込み、ターゲットのニーズに合わせて最低限のリフォーム・修繕・設備の導入を行います。大掛かりなリフォームは不要で、例えば学生向けなら無料wifi付きにする程度でも構いません。ターゲットを絞って物件を差別化すれば、少ない費用でも十分な空室対策ができます。

アパートの問題点を見極め最小限の費用で改善する

アパートの問題点を洗い出し、最小限の費用ですぐに効果が出そうな部分から着手します。

問題点対策
共有部分の照明が暗い共用部の電球をLEDなど明るい色に交換する。防犯上の観点からも効果的
ゴミ置き場が汚い蓋付きのゴミ捨てボックス・防犯カメラを設置する(設置には自治体への届出が必要な場合あり)
昭和時代の古い設備が残っている全交換ではなく、便座のウォシュレット化・水栓のシングルレバー化など目立つ部分だけ交換する
駅から遠い最寄り駅の駐輪場を確保し、自転車付きの物件として貸し出す

最終目的の売却時期を明確にしてから修繕費を決める

相続したアパートを経営するうえでリフォームやメンテナンスは欠かせませんが、かける費用は家賃で回収できる範囲にしないと赤字になります。「3年後に売却する」というように経営期間を先に決め、それまでに回収が見込める範囲で設備投資・修繕を行いましょう。売却までにできるだけ資産価値を高めておけば、空室のない状態で収益物件として不動産投資家に高値で売却できる可能性が上がります。

ただし空室が目立ち立地も良くない築古物件では、修繕費をかけて運営を続けるよりも更地にしたほうが買い手がつきやすいこともあります。更地で売却する場合は、入居者の立ち退き予算の確保や、解体までの間の入居は定期借家契約にするなどの対策が必要です。

賃貸アパート経営の最終目的は、大きく分けて「建替え」「子どもに引き継ぐ」「売却する」の3つがありますが、相続したアパートの場合は「売却する」が最適解となるケースが多いでしょう。

「建替え」は、新築後4〜5年で家賃収入が2割ほど下がる一方でローン返済・修繕費は続くため、都心部の駅近など今後も賃貸需要が見込める一部のケースを除いて避けたほうが無難です。相続税の節税メリットを強調して新築建設を勧めてくるハウスメーカーの営業には注意しましょう。「子どもに引き継ぐ」も、相続時点で既に築古のアパートはさらに老朽化が進んだ状態で子どもに渡ることになり、空室だらけの物件では売却すら難しくなるリスクがあります。

一括借り上げを見直す

キャッシュフローをプラスにするには、出ていく経費を減らす努力も大切です。相続アパートが一括借り上げ(サブリース)契約をしている場合は、解約して自主管理・管理委託にすることも検討してみましょう。

一括借り上げは、アパート一棟を不動産管理会社に借り上げてもらい、会社がオーナーに代わって入居者を募集・又貸しする契約です。空室の有無にかかわらず毎月一定額の保証賃料を受け取れるメリットがある一方、賃料収入のうち10〜20%程度を手数料として支払うことになり、さらに保証賃料は数年おきに引き下げが提案されるのが一般的です。

解約したい場合は契約書の解約条件を確認しましょう。多くの場合3〜6か月前の書面通知が必要です。ただし途中解約できない契約や、収益が出ている物件では解約を拒否されるケースもあります。途中解約できない場合は、賃料の引き下げ幅をできるだけ抑えるよう交渉してみましょう。

相続したアパート経営を売却か相続放棄した方がいいケース

アパートの状態によっては早期の売却を考えたほうが良いケース、そもそも相続せずに相続放棄したほうが良いケースもあります。

経営か売却か相続放棄か判断する4つのポイント

確認項目チェック内容
ローンの残債団体信用生命保険の加入有無を確認。不明な場合は全国銀行協会で借入状況を開示請求できる
アパート経営にかかる経費光熱費・管理費・保険料・固定資産税・大規模修繕費を確認。築10年以上は大規模修繕の可能性大
家賃滞納者の有無未払い家賃の請求権は5年で時効消滅。長期滞納の放置がないか確認
黒字経営か赤字経営か減価償却により帳簿上は赤字でもキャッシュフローはプラスの場合がある。実際のキャッシュフローで判断する

相続税が発生するかどうかも確認しておきましょう。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算でき、賃貸アパートは他人に貸している分、評価額が低く算定されます。相続アパートの相続税評価額の詳しい計算方法は以下の記事で解説しています。

アパート相続にかかる税金はいくら?初心者でもわかる相続税の計算方法

売却した方がいいケース

相続したアパートの状態を確認し、以下に当てはまる場合は売却を検討したほうが良いでしょう。

・ローンの残債があるが売却すれば返済できる
・近く大きな修繕が必要だが、手持ちの資金がない

ただし相続後すぐに売却すると、税務署から租税回避行為とみなされる場合があります。実際に、融資を受けて不動産を購入した資産家が3年後に相続し、ローン負債と資産が相殺されて相続税がゼロになったものの、相続人が1年以内に購入金額に近い価格で売却したケースで、国税庁が「不動産は実際の時価で評価すべき」として評価方法を認めなかった事例があります。特に相続税対策のために購入された物件や、3年以内に取得された物件は、相続後すぐの売却を避けたほうが無難です。

売却を検討する場合は、まず査定額を確認する

空室が多い、老朽化している物件でも、現況のまま査定を依頼できる買取専門業者があります。経営を続けるか売却するかは、実際の査定額と今後の収支シミュレーションを比較してから判断することをおすすめします。

【正しい買取】現況のまま無料査定を依頼する(空室・老朽化ありでも査定可能)

相続放棄した方がいいケース

相続する前に放棄したほうがいいケースもあります。

・キャッシュフローがマイナス
・売却してもローンが返済できず残債が残る

キャッシュフローがマイナスのアパートを相続すると、自分の資産を取り崩していくことになります。資産に余裕があれば立て直しも可能ですが、そうでなければ負の遺産となってしまいます。負債が多く売却も難しいアパートは、相続してしまうとローン負担が重くのしかかるため、相続放棄も検討したほうがよいでしょう。

ただし相続放棄では、マイナスの遺産だけでなく全ての遺産を放棄することになり、一度放棄すると後で他の財産が見つかっても取り消せません。相続放棄には、相続の発生を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きする必要があります。相続人同士の話し合いだけで放棄を宣言しても法的には認められない点に注意しましょう。相続放棄の具体的な手順は以下の記事で解説しています。

【古いアパートを相続放棄】相続放棄の手順を解説!放棄しない方がいいケース!

まとめ

相続したアパートを経営するときのポイントをまとめました。

・ターゲットを設定し、ニーズに合わせた修繕をして経営する
・修繕にかける費用は売却時期を先に決めて回収できる範囲にする
・大きな修繕が必要で手持ち資金がないとき、キャッシュフローがマイナスのときは早期売却や相続放棄も視野に入れる

相続したアパートをどうするか迷っている場合は、以下のガイドもあわせてご覧ください。

築40年築50年アパートを相続する場合の4つの選択肢


※本記事は監修者「森(株式会社スマートアンドカンパニー専任 宅地建物取引士)」のレビューを経て公開しています。記載の税制・法改正情報は2026年時点のものであり、個別の判断は最新の国税庁タックスアンサーおよび専門家への相談を推奨します。