相続アパートを取り壊すと節税の特例が適用されない?取り壊しの費用は?

相続した不動産売却のポイント

古いアパートを相続した時、老朽化が進んでいて賃貸収入が見込めない場合も少なくありません。

「相続したアパートを取り壊したいが、取り壊し費用はいくらかかるのだろう」「相続アパートは取り壊すと税金対策ができなくなるの?」といった疑問に、不動産会社のスマートアンドカンパニーが解説していきます。

アパートを相続してどうするかまだ迷っている方は、まず4つの選択肢を整理した以下のガイドもあわせてご覧ください。

築40年築50年アパートを相続する場合の4つの選択肢

「アパートを相続したときの相続税はいくらか知りたい」という場合には、以下の記事もあわせてご覧ください。

アパート相続にかかる税金はいくら?初心者でもわかる相続税の計算方法

相続アパートを取り壊すと相続税の特例が使えなくなる?

相続したアパートをすぐに取り壊してしまうと、相続税節税の特例(小規模宅地等の特例)が適用されない場合があります。どのような場合に特例が適用されないのか、取り壊しができるのはいつからなのかを解説します。

特例が適用されないケース

例えば、老朽化したアパートを取り壊して駐車場経営を始めた場合、「賃貸事業を引き続き行っている」ように見えますが、小規模宅地等の特例は貸付事業をそのまま引き継ぐことが前提とされているため、事業内容が変わったとみなされ特例を受けられなくなります。

また、相続したアパートをすぐに取り壊して売却する場合も、相続税の申告期限までは事業を継続している必要があるため、特例を受けられません。加えて、相続後すぐの売却は「租税回避行為」とみなされるリスクもあります。租税回避行為とは、意図的に相続税を逃れる行為を指し、税務調査で指摘・否認されるケースが多くあります。

租税回避行為の疑いを避けるためにも、相続アパートは一定期間保有しておくことが無難です。目安となる保有期間は、相続税の申告期限である10か月に、一般的な税務調査機関である3年を加えたおよそ4年程度と考えておくとよいでしょう。

特例が適用されるケース

相続したアパートを取り壊して新たにアパートを建て、賃貸経営を継続する場合は、相続税節税の面で大きなメリットがあります。空室が多いアパートを建て替え、管理会社とサブリース契約を結べば、空室があっても賃貸割合は100%で計算できます。

建て替え前から入居している賃借人が建て替え後も住み続ける場合は、貸家建付地評価を適用でき、さらなる節税につながる可能性があります。適用には、以下の条件を満たす必要があります。

①建て替え前の賃借人が建て替え後にも入居すること
②立退料を支払っていないこと
③敷金などの支払いがあり、契約が成立していること

相続アパートの解体費用の相場

構造別の坪単価

解体費用は建物の構造によって大きく異なります。おおよその坪単価は以下の通りです。

建物の構造坪単価の目安
木造(2階建て)3万円〜4万円
木造(3階建て)6万円〜8万円
軽量鉄骨造3万円〜6万円
重量鉄骨造4万円〜7万円
鉄筋コンクリート造4万円〜10万円

例えば延床面積60坪の木造2階建てアパートであれば、180万円〜240万円程度が本体解体費用の目安になります(別途、以下で解説する諸費用が加算されます)。

総額の具体例(60坪・木造2階建てのケース)

本体解体費用に加えて、仮設工事費・整地費用・廃棄物処分費などを含めた総額の目安を試算すると、以下のようになります。

費用項目金額目安
本体解体費用(坪3.5万円×60坪)約210万円
仮設工事費約15万円〜25万円
整地費用約10万円〜20万円
廃棄物処分費(別途計上する業者の場合)約20万円〜40万円
諸経費(近隣挨拶・書類手続き等)約5万円〜10万円
総額目安約260万円〜305万円

上記はあくまで目安であり、立地条件やアスベストの有無によって大きく変動します。正確な金額は必ず現地調査を経た見積もりで確認してください。

解体費用の内訳

解体費用には、建物本体の取り壊し費用以外にも複数の費用が含まれています。

費用項目内容
仮設工事費足場・養生シートの設置費用
解体工事費建物本体の取り壊し作業費用
整地費用解体後、土地を平らにならす費用
廃棄物処分費解体で出た廃材・ゴミの処分費用
人件費作業員・警備員の費用
付帯工事費ブロック塀・庭木・浄化槽などの撤去費用
諸経費近隣挨拶・書類手続きなどにかかる費用

解体費用が高くなりやすい条件

以下のような条件に当てはまる場合、解体費用は相場よりも高くなりやすくなります。

条件費用が上がる理由
道幅が狭い重機が入れず手作業が増え、人件費がかさむ
前面道路との高低差が大きい資材の搬出入に手間がかかる
隣の建物と極端に近い養生(防音・粉塵対策)を厚くする必要がある
電柱・電線が近接している電力会社との調整・仮移設の手間がかかる
通行人の妨げになる立地警備員の配置が必要になり人件費が上がる
アスベストが使用されている特殊な除去作業・処分費用が別途発生する

特にアスベストは、1975年以前に建てられた建物で使用されているケースが多く、築40年・築50年のアパートでは珍しくありません。事前調査(アスベスト含有調査)が義務付けられているため、見積もり時に調査費用が含まれているかも確認しておきましょう。

解体するアパートの状態によって費用は大きく変わるため、解体の場合も複数社から見積もりを取り、条件に納得できる業者に依頼することをおすすめします。

解体業者を選ぶときの注意点

解体業者を選ぶ際は、金額の安さだけで判断しないことが重要です。以下の点も確認しましょう。

・建設業許可または解体工事業登録を受けている業者か
・産業廃棄物収集運搬業の許可を持っているか(自社で処分する場合)
・近隣への事前挨拶を業者側で対応してくれるか
・工事保険(賠償責任保険)に加入しているか

極端に安い見積もりを出す業者の中には、廃棄物を不法投棄して費用を浮かせているケースも報告されています。相続した資産の処分で法令違反に巻き込まれないよう、許可・保険の有無は必ず確認してください。

解体費用を安くする方法・使える補助金

解体費用を安くする方法

①複数社から相見積もりを取る
②残置物(家財・ゴミ)を事前に自分で片付けておく
③中間マージンが発生する仲介業者を通さず、解体業者に直接依頼する
④閑散期(解体業者の繁忙期を避けた時期)に依頼する
⑤自治体の補助金・助成金を活用する

自治体の補助金制度

相続アパートの状態によっては高額になってしまう解体費用ですが、自治体が行っている補助金を活用すればある程度おさえることができます。お住まいの自治体によって実施の有無や条件が異なるため、解体を検討されている場合は自治体に確認してください。

「都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金」

長年手入れをしていない建物は、不法侵入や放火などの犯罪、倒壊のリスクがあります。老朽化が進んだ家屋の解体を補助する制度で、補助金額は自治体によって異なります。

「老朽危険家屋解体撤去補助金」

老朽化が進み倒壊の恐れがある建物に対して適用される制度です。一部の自治体で実施されているため、お住まいの自治体で取り扱いがあるか確認してみてください。

「建て替え建設費補助金」

老朽化の進んだアパートを集合住宅に建て替える際の、建築費用や解体工事費用を補助する制度です。条件はありますが大きな補助が受けられる場合があるため、対象建築物にあたるか、要件を満たすかを自治体に相談しましょう。

適正な解体費用かどうかチェックするポイント

見積もりを取った際、金額が適正かどうかを判断する材料として以下を確認しましょう。

・見積書に「仮設工事費」「解体工事費」「整地費用」「廃棄物処分費」などの内訳が明記されているか
・追加費用が発生する条件(アスベスト・地中埋設物など)が事前に説明されているか
・産業廃棄物のマニフェスト(処分の証明書)を発行してもらえるか
・建設リサイクル法に基づく届出を行う業者か

内訳が「一式」とだけ書かれた見積書は、後から追加費用を請求されるトラブルの原因になりやすいため注意が必要です。

相続アパートを取り壊し更地にしたら売却価格は高くなる?

取り壊して売却すると使える「空き家の3,000万円特別控除」

相続した建物が空き家(1981年5月31日以前の旧耐震基準で建てられたもの等、一定の要件を満たすもの)であれば、取り壊して更地にした後に売却することで、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)。

この特例はアパートそのものではなく、被相続人が一人で住んでいた自宅に主に適用される制度です。相続したアパートの一室に被相続人が居住していた場合など、要件に当てはまるかどうかは個別の判断が必要になるため、税理士に確認することをおすすめします。適用できれば、解体費用を差し引いても手取り額が大きくなるケースがあります。

築30年以上の相続アパートは更地にして売却した方が良い場合も

築30年以上のアパートは、かなり老朽化が進んでいるとみなされます。ほとんどのアパートの耐用年数は10〜20年程度と言われており、30年以上経過すると建物自体が古くなるだけでなく、内装や設備にも古さが感じられてしまいます。

そのため、築30年以上のアパートは建物としての価値がほとんどない状態となり、修繕・リフォームで再生しようとすると多額の投資が必要になります。この場合、解体して土地として売却したほうが高く売れて得をするケースもあります。更地であれば解体費用をかけずにすぐ新しい事業を始められるため、買主に好まれる傾向があります。

解体するか、現況のまま買い取ってもらうかの判断

ただし、解体費用は数百万円単位になることも多く、「解体してから売る」と「解体せず現況のまま買い取ってもらう」のどちらが手元に残る金額が大きいかは、物件ごとに計算してみないと分かりません。3つの選択肢を比較すると、大まかに以下のような特徴があります。

選択肢メリットデメリット
解体してから更地で売却買い手がつきやすく、仲介での売却価格は比較的高くなりやすい解体費用(数百万円)を先に自己負担する必要がある
現況のまま買取業者へ売却解体費用の持ち出しが不要、手続きが早い買取価格は仲介の相場よりも低くなる傾向がある
解体せず保有を続ける当面の出費を先送りできる固定資産税・管理コストがかかり続け、老朽化がさらに進む

「解体費用を払ってでも高く売れるか」「そのまま買い取ってもらって早く現金化するか」は、想定される仲介売却額と解体費用・買取額を実際に見積もってみないと判断できません。まずは両方の見積もりを取り、手元に残る金額で比較することをおすすめします。

解体費用をかける前に、現況のままの買取価格を確認する

老朽化したアパートを解体せずそのままの状態で買い取ってくれる買取業者であれば、解体費用の持ち出しなしで手放すことができます。まずは現況のまま査定を依頼し、解体して売る場合の見積額と比較してから判断することをおすすめします。

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更地にして仲介での売却を目指す場合は、複数の不動産会社に査定を依頼し、立地条件や土地の特性からどちらの売り方が得か判断してもらいましょう。

本当にいくらで売れるか分からない、というときは

一社だけの査定では相場観がつかみにくいため、複数社の査定額を比較することをおすすめします。

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更地にする場合の注意点

古いアパートを取り壊して更地にする場合、以下2つの注意点があります。

1. 固定資産税の負担が最大で6倍に増える
2. 新しい建物が建てられない土地と定められていることもある

建物が建っている土地は「住宅用地の特例」により固定資産税が軽減されていますが、更地にするとこの特例が外れ、固定資産税が大きく増える可能性があります。更地のまましばらく保有したいという場合は、この点に注意してください。できるだけ早く売却するほうが、支払う税金は少なくて済みます。

また、相続した土地が「市街化調整区域」に指定されている場合、新築の建物を建てられないことがあります。建て替えは可能でも高さ制限がある、これまで住んでいた家族に限るなど、様々な条件が付くケースもあります(公法上の規制)。これは土地を査定する際にも重視されるポイントです。解体する前に、再建築が可能な土地かどうかを自治体に確認しておく必要があります。

よくある質問

Q. 解体費用は相続税の債務控除の対象になりますか?

A. 相続開始後に発生した解体費用は、原則として被相続人の債務ではないため、相続税の債務控除の対象にはなりません。ただし、解体後に売却して譲渡所得を計算する際には、取得費や譲渡費用として扱える場合があります。詳細は税理士に確認してください。

Q. 更地にした土地を売却せず、駐車場として活用するのはどうですか?

A. 選択肢の一つですが、前述の通り「賃貸事業を継続した」とはみなされず、小規模宅地等の特例は使えなくなります。また更地の固定資産税は住宅用地より高いため、駐車場収入と税負担・管理コストを比較して判断する必要があります。

Q. 解体費用の見積もりは何社くらい取ればよいですか?

A. 一般的には3社程度から相見積もりを取ることが推奨されています。極端に安い、または高い見積もりが混ざっていないか比較することで、適正価格の相場感がつかみやすくなります。

まとめ

相続したアパートをすぐに取り壊してしまうと、小規模宅地等の特例を受けられなくなる場合があります。収益が見込めない場合でも、節税対策のためにはおよそ4年程度キープしておくことが無難です。

解体費用は建物の構造や立地条件によって大きく変動し、木造2階建てで坪3万円〜4万円、鉄筋コンクリート造では坪4万円〜10万円が目安です。自治体の補助金が使える場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

また、「解体してから売る」だけが選択肢ではありません。老朽化した物件を現況のまま買い取ってくれる業者に査定を依頼し、解体費用をかけた場合と比較してから判断することも有効な選択肢の一つです。アパートを相続してどうするか迷っている場合は、以下のガイドもあわせてご覧ください。

築40年築50年アパートを相続する場合の4つの選択肢


※本記事は監修者「森(株式会社スマートアンドカンパニー専任 宅地建物取引士)」のレビューを経て公開しています。記載の税制・法改正情報は2026年時点のものであり、個別の判断は最新の国税庁タックスアンサーおよび専門家への相談を推奨します。