投資用マンションを売却したときの税金に関する知識のまとめ

税金に関する知識

会社勤めを続けながら投資用マンションを所有し賃貸経営をするサラリーマン投資家の方が増えてきています。今回は、投資用マンションを売却した際の税金について不動産会社スマートアンドカンパニーがわかりやすく解説します。
記事では以下の内容を説明します。

  • 投資マンションを売却した場合にかかる税金
  • 適用できる控除と特例
  • 投資用マンションを売却するタイミング

よく知らないまま不動産投資を行うのはリスクがあります。投資用マンションを売却したときの税金についてしっかりと押さえておきましょう。

投資用マンション売却時に支払う税金

投資用マンションを売却した際にかかる税金をみていきたいと思います。関連する税金は、5つです。

【投資用マンション売却時の税金】
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税
  • 所得税
  • 住民税

この5つの税金の中で、マイホームである居住用マンションを売却した場合と最も異なるのは消費税でしょう。自分が居住するための住居を売却した場合、消費税は課税されないからです。

また、必ず支払う税金と場合によって支払う必要のある税金、売却して利益が出た場合に支払うものと、利益に関わらず支払う必要があるものもあります。まずは、売却後の利益のあるなしにかかわらず支払う必要がある税金から見ていきましょう。

 投資用マンション売却で利益がなくても支払う税金

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税

印紙税

投資用マンションに関わらず不動産を売却する際には、その売却価格に応じた額を支払う必要があります。具体的には、売買金額に応じた額の印紙を購入し、売買契約書にそれを貼付します。

平成9年4月1日から令和4年3月31日までに作成された契約書に関しては、軽減税率が適用されています。軽減された税額は以下の通りです。

10万円を超え50万円以下200円
50万円を超え100万円以下500円
100万円を超え500万円以下1千円
500万円を超え1千万円以下5千円
1千万円を超え5千万円以下1万円
5千万円を超え1億円以下3万円
1億円を超え5億円以下6万円
5億円を超え10億円以下16万円
10億円を超え50億円以下32万円
50億円超48万円

(国税庁ホームページより抜粋)

 登録免許税

ローンを完済して抵当権抹消手続きが済んだ物件を売却する際にはかかりませんが、ローンの残債がある物件を売却する場合には登録免許税が必要となります。これは、登記の手続きをする際に掛かる税金です。

マンションを購入する際にローンを組む場合がほとんどだと思います。ローンを組んで購入した物件には融資した金融機関が抵当権を設定しています。まだローン返済が残っているマンションを売却する際には、ローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。抵当権は設定された際に法務局の登記簿に登録されています。抵当権を抹消するために登記が必要になるのですが、その際に登録免許税という税金がかかります。例えば、マンションの場合、土地と建物に関して登記がされています。抵当権抹消にかかる登録免許税は不動産一つに対して1,000円ですので、土地が分筆されていなければ土地と建物分あわせて2,000円が必要となります。

 消費税

消費税に関しては必ずしも支払う必要があるというわけではありませんが、納税対象となる場合がありますので、確認しておきましょう。

消費税というと販売事業者が納めるというイメージがあるかもしれません。個人が物件売却時に消費税を納める場合があるという点にピンとこない方もいらっしゃるでしょう。法人ではなく個人でマンションを所有している場合でも売却時に消費税が課される場合があります。個人でもマンションを所有し賃貸業を行っている場合は事業者扱いとなるからです。

ただしマンションを売却したからといってすぐに課税対象になるわけではありません。課税対象とみなされるのは、個人であれば前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合です。

注意が必要なのは、昨年から急に売上高が増加した場合などです。前々年の売上高が1,000万円超でなくても、前年の1月1日から6月30日までの課税売上高が1,000万円を超えた場合には、課税事業者となります。つまり複数の投資物件を所有していて2年以内に続けて売却する場合には消費税が課税される場合があります。昨年や前々年の売上高によって課税される事になりますので、課税対象となりそうな時期の売却は、消費税分を売却金額に加味しておくなど対策が必要となるでしょう。

消費税が課税されるのはマンションの建物部分のみです。土地には課税されません。

消費税課税対象
  • 前々年の課税売上高が1,000万円超
  • 前年1月1日~6月30日までの課税売上高1,000万円超

 投資用マンションを売却で利益が出たとき支払う税金

  • 譲渡所得税(所得税・住民税)

譲渡所得税(所得税・住民税)

マンションなどの不動産を売却して生じた所得を譲渡所得といいます。投資用マンションの売却によって譲渡所得がプラスになった場合には、その利益分に対して所得税、住民税が課税されます。税額は、課税譲渡所得から特別控除があればその額を差し引いた額に税率を掛けて計算されます。計算式は以下のとおりです。

税額=課税譲渡所得金額×税率
譲渡所得の計算方法

譲渡所得の計算方法をみていきましょう。譲渡所得は、売却して得られた金額から、取得に掛かった費用、譲渡に掛かった費用を引いて求めます。

譲渡所得 = 譲渡収入金額−(取得費+ 譲渡費用)

投資用マンション売却でかかる税金以外の費用

投資用マンションを売却した際に税金以外にかかる費用について簡単に見ていきましょう。投資用のマンションではなく、居住していたマンションを売却する際にもかかってくる費用ですのでマンション売却を検討している方は確認しておきましょう。

投資用マンション売却時にかかる3つの費用

  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 繰り上げ返済手数料
仲介手数料

仲介手数料は、マンションの売却時に仲介を依頼した不動産会社に支払う手数料です。投資用で所有していたマンションも売却するとなると居住用マンションと同じように不動産会社に仲介してもらい売却することになります。

税金以外の掛かる費用の中では最も大きな金額を占めるのが仲介手数料だと言えるでしょう。仲介手数料は上限の範囲内で不動産会社が自由に設定出来ますが、不動産会社にとっては大きな収入源ともなりますので上限いっぱいまでの手数料を設定している場合が多いと言えます。400万円超の物件に関する仲介手数料の上限額は、売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税となります。上限額は物件の売却価格に対する割合で設定されていますので、高く売却出来ればその分仲介手数料も多く支払う事になります。

登記費用

マンションをローンで購入していたとき、マンションにローン返済が残っている場合は、抵当権抹消登記費用がかかります。登記は司法書士に代行を依頼しますので司法書士に対する報酬が必要です。相場は1万円前後となることが多いでしょう。ただしローンがない場合は不要となります。

繰り上げ返済手数料

これもマンションにローンが残っている場合に必要です。マンション売却するためにローンの残額を一括返済する事が必要ですが、その際に金融機関へ支払う手数料です。金融機関によって異なりますが3万から5万ほど掛かる場合があります。

投資用マンションと自宅マンションの売却で異なる点は税金です。費用についての詳細は金額を当てはめて計算した記事が参考になります。
以下の記事では具体的な計算例と計算式を掲載していますから、ぜひ参考にしてみてください。

投資用マンション売却時の譲渡所得税・その注意点とは

所有期間によって税率が異なる!5年を超えて所有しているかが重要

投資用マンションを売却する際に、5年を超えて保有していたかそうでないかで、かかる税金は変わってきます。所有している期間が5年を超えていない場合には、より高い税率がかかりますので注意が必要です。

長期譲渡所得(5年超)  :税率20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
短期譲渡所得(5年以下) :税率39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)

(2013(平成25)年から2037年まで、復興特別所得税として所得税額×2.1%相当が上乗せされています。)

所有期間が5年以下で売却した場合には、5年を超えて所有していた場合と比較すると2倍近く高い税率が課される事になります。この差は大きいですね。

5年という所有期間の適用については、勘違いしやすいので注意が必要です。売却時点で所有している期間が5年超でも、売却した年の1月1日の時点で5年を超えていなければ適用されません

「購入時より安く売却したので課税されない」は誤解

資産価値の低下によりマンションを購入した時よりも安い金額で手放す事になった場合も多いでしょう。例えば、2,000万円で購入したマンションを1,500万円で売却した場合、「購入時よりも安く売却して損失が出たのだから、税金はかからない」と認識している方も多いかもしれません。実は購入時よりも安い金額で売却した場合でも譲渡所得税が課される場合もありますので注意が必要です。

先に述べたように譲渡所得は、譲渡収入金額−(取得費+ 譲渡費用)で求める事ができます。この譲渡所得がプラスになった場合に利益が出たとみなされ課税対象となります。一見すると、購入時の金額よりも売却額が下がっていれば譲渡所得はマイナスになるように思えます。

ここで重要なのは取得費です。取得費とは物件を「買った金額」を指すのですが、投資用マンションを購入した金額そのものではなく減価償却分を差し引いた金額となるのです。減価償却というのは、建物の耐用年数に応じて決まる償却率という割合分を、購入金額から劣化していく分として毎年経費に計上していく仕組みです。ですから、購入して年数が経ち、減価償却が進んだ物件では取得費が売却金額を下回る場合も考えられるのです。

譲渡所得について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみて下さい。

投資用マンションを売却した時に受けることができる控除と特例


投資用マンションを売却したときに受ける事のできる控除は2つあります。

特定事業用資産買換え特例

個人が事業用の資産を買い換えた場合に、譲渡益の一部を将来に繰り延べることができる特例です。これは繰り延べなので譲渡所得税が減免されるわけではありません。買換え特例の適用を受けるにはいくつかの要件がありますので主な点をみておきましょう。

  • 売却する資産と買い換える資産がともに国内であること
  • 売却した年の1月1日時点で売却資産を10年超所有していること
  • 買い換え不動産が土地の場合は300㎡以上であること
  • 資産を譲渡した年とその前年、翌年の3年間に資産を買い換えること
  • 買換え資産は取得後1年以内に事業に使うこと

上記の要件に該当すれば譲渡所得にかかる税金が最高で80%、将来に繰り延べることができるようになっています。ただし、この特例はあくまでも課税の繰延べです。ですから買換えた資産を将来譲渡する際に、減税になった分も含めて課税されることになります。

平成21年22年に取得した土地限定の特例

不動産の取得期間が2年間に限られているのでご存知ない方も多いかもしれません。2008年(平成20年)のリーマンショックによって低迷してしまった不動産市場を活性化させる観点から設けられた特例です。

平成21年及び平成22年に取得した土地等を所有期間が5年を超えて譲渡した場合、譲渡所得の金額から1,000万円を控除することができるというものです。取得した不動産が土地ではなくマンションの場合でも土地部分に関して適用がされます。自身の居住用だけではなく投資用の物件に関しても控除が受けられます。この期間に購入した投資用マンションを売却する場合は必要な書類を添えて確定申告をすることで利用できます。

損失がでたとき損益通算はできない

投資用のマンションの売却で譲渡所得から特別控除額を差し引いた額がマイナスになった場合、所得税や住民税はかかりません。ただし、個人の居住用の不動産を売却して譲渡損が発生した場合は確定申告する事で税金の還付がありますが、投資用不動産では譲渡損失が生じた場合でも他の所得と損益通算することはできません。

 

投資用マンションでは、居住用マンションを売却した場合とは異なり適用を受けられる特例は少なくなっています。居住用マンションの特例について詳しく知りたい方はこちらもあわせてご覧下さい。

投資用マンションの売却時期


投資用のマンションは居住目的のマンションとは違い毎月の収益が出ます。そのため毎月の収益を鑑みて、売却する時期を考える必要があるでしょう。

【投資用マンションの売り時や売却に出すタイミング】
  • 市場が活性化しているなど高値で売却できる要因がある時期
  • 所有期間が5年以上経っている
  • ローンの返済額に占める元本部分が減価償却費を超えてしまう状態になり、デッドクロスに陥っている場合

投資用マンションをいつ売却するべきなのかは投資物件特有のタイミングがあると言えるでしょう。投資用マンション売却には、市況だけでなく収支状況や利回り、税金も考慮しなければならない点に注意しましょう。

より高値で売却を目指すためには、まず複数の不動産会社から査定を取って、腕の良さそうな不動産会社を見つけて依頼をすることも大切です。

査定はインターネットで1分ほどで申し込みできる場合がほとんどです。
まずは2020年最新マンション売却一括査定ランキングを参考にして人気の高い会社から査定を取ってみましょう。

まとめ

  • 投資マンションを数年で複数売却した場合では消費税が課税される場合がある
  • 事業用物件を買い換えた場合に利用できる特例がある
  • 投資用マンション売却タイミングは市況だけでなく、収支状況、利回り、税金も考慮して判断を

投資用マンション(不動産)を売却する際には、居住用の場合と切り離して考える必要があります。特に違いがあるのが、課税に対する考え方です。投資用マンションを売却した場合には、居住用では納税の必要がない消費税も課税される場合がありますし、特例や控除も居住用ほど手厚くありません。投資用のマンション(不動産)を売却する際には市況の良し悪し、収支状況や利回りだけでなく、税金に関してもしっかり理解することが重要です。