損害賠償・賃借権・債務保証の相続について

遺産相続の基礎知識

損害賠償の相続


 損害賠償とは、ものを壊してしまったり、相手にけがを負わせてしまった場合などに、その修理や治療にかかる費用などを金銭的に補償することをいいます。交通事故で相手の車を傷つけたり、相手にけがを負わせた場合も、損害賠償をしなければなりません。
 この損害賠償は相続できるのでしょうか?もちろん、できます。、、といいますか、交通事故で一家の主がなくなった場合は、その主に対する損害賠償でありますが、当然残された家族に対する賠償責任でもあるわけです。これは、主に対する損害賠償を遺族が相続したことになってますよね。
 小さな対物事故から大きな人身事故まで、交通事故は、自由に車がスピードを出して動く限り、無くなることはないでしょう。最近では、高齢者がブレーキとアクセルを間違えたために、大きな事故が、、というニュースを聞くことがあるかと思います。当然、政府も自働車メーカーに誤認を防ぐための技術を自動車に導入するように、促してはいます。
 とはいっても、事故がなくなるのは、むずかしいです。。
 事故により亡くなった場合、その加害者は、被害者の遺族から損害賠償を受けます。今は、ほとんどの場合、保険会社が間に入って、損害賠償の交渉をします。(最近は、必要書類も少なくなりました。)自働車は、購入や車検の際に、自賠責保険に加入しなければなりません。しかし、この自賠責保険は、対人賠償の補償しかなく、また死亡した際の賠償金額は3000万円が上限です。人が亡くなった場合は、この金額では足らないことも多く、たいていの場合は、任意保険といって、民間の保険会社で自動車保険にみなさん加入されているかと思います。
 その任意保険では、対人や対物の賠償保険金額が無制限というのもに加入していれば、賠償責任を負った場合、金銭的な賠償金は上限なく払えることとなります。(交通事故で対人事故を起こした場合の、刑事責任は別に存在します。)
 しかし、任意保険に入っていない場合に、対人事故を起こしてしまうと、大変なことになってしまいます。自働車の任意保険は、事故を起こす可能性が高いとされる若年層(いわゆる年齢を問わず補償という区分の保険)の保険料が高くなってしまうため、たまに任意保険に入らない人がいます。名前の通り、任意ですから、、、(自賠責保険はそれに対して強制なので、強制保険ともよばれています。)この任意保険に入らないで事故を起こしてしまったらどうなるでしょうか?
 例えば、父・母・子の家族がいたとしましょう。その父が自働車事故を起こして、加害者となったとします。しかし、その父は加害者側ですが、亡くなってしまったとします。(自動車事故の場合、過失割合といって、どちらがどれくらいの過失があるかが、警察の事故証明書などを元に算定されます。加害者側というのは、この過失割合が高い人の側を加害者といっています。)
 この場合、まず、自賠責保険から、被害者側に損害賠償金額として、被害者が死亡した場合は、3000万円がしはらわれます。この損害賠償金額は、被害者の属性によって大きく異なってくるので、人それぞれ違いますが、被害者が亡くなった場合は、自賠責保険の保険金だけでは足らないケースが多くなります。そうなると、被害者は、加害者の遺族に足らない損害賠償の金額を請求することができます。つまり、マイナスの財産を加害者側の遺族は相続することになってしまいます。加害者である父が、勤務中の場合は、雇用主である会社にも、被害者は請求することができますが、そうでない場合は、加害者の遺族が損害賠償をしなければなりません。
 そうなると、加害者の遺族は、相続を放棄する権利も持っているため、放棄することで、損害賠償をする義務はなくなることになります。
 ただ、被害者側は、損害賠償をしてもらえなくなるので、それはそれで問題ではあります。いちおう任意保険には、そういった場合のために、人身補償保険という保険も用意しているので、そちらに加入されておくと安心ではありますが。。

賃借権の相続


 賃貸マンションに住んでいる人が亡くなった場合は、どうなるのでしょうか?
 持ち家でない場合は、当然賃貸に住んでいるわけですよね。マンションの契約者である人が亡くなってしまった場合、残された家族である遺族は、そのままマンションに住むことができるのでしょうか?つまり、賃借権は相続できるのでしょうか?
 賃借権というのは、お金を払って借りて住む権利のことをいいます。借りている契約期間はマンションに住むことができる権利です。
 答えです。はい。残された家族は住むことができるのです。つまり、賃借権は相続することができます。そうでないと、たしかに困りますよね。家族が亡くなって、悲しみとともに、大変な手続きなどがあるにもかかわらず、住む家がないとなると、残された家族まで体調がおかしくなってしまうでしょうから。。
 ですので、賃借権は相続ができることになっています。
 この賃借権を相続させるには、相続と、遺贈の2種類があります。
 1つ目は、被相続人が、遺言によって、賃借権が相続された場合です。
 相続人が契約していた内容をそのまま引き継いで、マンションの新しい借主となります。賃借権を相続によって得た場合は、貸主であるオーナーさんに特に承諾をもらう必要はありません。
 2つ目は、遺贈の場合です。遺贈というのは、相続人がなくなることを理由として贈与することをいいます。
 この場合は、相続人が、賃借権をあげることとなるため、マンションのオーナーさんに承諾を得る必要が出てきます。
 では、遺贈でなくて相続でいいじゃない?って思われるかもしれませんが、遺贈の場合は、財産を受け取る相続人が法定で定められた相続人ではない場合も存在するからです。 
 遺贈は、法定相続人でない人を相続させることができる制度ですから。つまり、被相続人が遺言によって、自分の財産を法定相続人以外の人に贈与できる制度なのです。
 例えば、戸籍上、夫婦でない内縁関係の場合は、法定相続人にはなりませんよね。しかし、遺言をする事によって、亡くなっても、賃借権を残った方に残すことができるわけです。その場合は、マンションのオーナーさんに承諾は必要ではありますが。
 遺贈は、被相続人が自分の財産を、自分が亡くなった後、どのようにするか決めることができる法で決められた制度なのです。

債務保証の相続


 では、保証債務は相続されるのでしょうか?
 保証債務には、2種類あり、連帯保証人の債務と、保証人の債務があります。
 連帯保証人は、連帯という言葉通り、債務者と連帯しているので、実際の債務者と同じ程度の責任を負うことになります。
 ですので、ただの保証人よりも責任が重いです。ときどきみなさんも、「連帯責任」という言葉を使いませんか?どちらか一方ではなく、どちらも一緒という意味で使っていますよね。
 例えば、債務者がお金を借りている場合、お金を貸している債権者から保証人に、債務者のお金を代わりに払ってほしいと要求されても、先に、当事者である債務者や連帯保証人に要求するように主張することができるのです。
 ・・・比べてみると、これって大きな違いですよね。
 では、初めの問題に戻ります。保証債務は相続されるのでしょうか?
 例をあげてみましょう。
 お父さんが、無くなる前に誰かの100万円の保証人になっていたとします。亡くなった後に、このことを息子さんが知ったとします。
 もし、息子さんが、お父さんの財産を相続するのであれば、、この保証債務も相続する事になってしまいます。保証債務を相続したくない場合は、相続の放棄をするか、限定承認と言う他の相続の方法をすることになります。
 相続は、プラスもマイナスも同時に相続するので、どちらかだけを相続することはできないのです。
 しかし、保証債務の中に、身元保証というものがあります。会社に就職する際に、必要書類に身元保証人を記入する欄がありませんでしたか?
 身元保証というのは、その保証する人が万が一損害を与えた場合に、それについて保証しますというものですが、この保証債務は、個人的な信頼として契約されたのものなので、亡くなった人が、誰かの身元保証人になっていたとしても、こちらは相続する必要はないのです。