相続と生命保険について・相続人が認知症の時どうする

遺産相続の基礎知識

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生命保険と相続


 被相続人が亡くなると、同時に相続が開始されることは何度もお話ししました。
 生命保険加入率の高い日本では、被相続人が生前に、死亡保険金の受取人を指定して、死亡保険を自分にかけている場合が多いです。
 この生命保険金の保険金額は数百万円~数千万円というケースもよくあることです。しかし、死亡保険金を指定された人とされない人では、相続する財産に大きな差が出ることとなり、相続人の間で、トラブルになりやすい傾向があります。
 では、なぜそのようなことになるかというと、生命保険は相続財産に含まないからです。亡くなった方が加入していたということは、被相続人の財産とも考えられなくもないですが、被相続人の死亡を事由として保険金が指定した保険金受取人に支払われるので、相続財産とはならないのです。ですので、遺産分割の対象には当然なりません。
 ただし、特別受益に該当し、相続分が減らされる可能性もあります。
 保険契約は、保険契約者・被保険者・受取人という3者が存在することになります。死亡を事由として保険金が支払われる死亡保険は、受取人は本人とはならないですが、おおむね、個人契約の場合、保険契約者と被保険者は同じ被相続人の場合が多いです。もちろん、契約者と被保険者が違う場合もありますし、契約者が被相続人で、被保険者が相続人の場合は、違ってきます。
 この死亡保険受取人を指定する場合としない場合があり、指定しない場合は、保険会社の約款にしたがうこととなりますが、基本的には、法で定められた受け取りとなります。生命保険は、契約によって受け取る保険金の扱いが変わってきますので、被相続人が生命保険に加入していた場合は、生命保険会社に契約内容をきちんと確認することをおすすめいたします。

相続人が認知症


 日本は高齢化社会を迎え、認知症になられる人が増加するだろうと言われています。認知症とは、さまざまな原因で脳の細胞の1部が死んでしまったり、機能が低下することによって、障害がおこり、日常生活に支障をきたす状態のことをいいます。
 では、相続人に認知症の人がいたらどうなるのでしょう。
 例えば、お父さん・お母さん・息子の3人家族がいたとしましょう。お父さんが亡くなった場合、相続人は配偶者であるお母さんと息子となります。しかし、このとき、お母さんは、認知症のため、十分に物事を判断する能力がありません。
 こういう場合は、民法に成年後見制度という制度があるので、この制度を利用することになります。成年後見人制度は、認知症の人を含めて、精神障害がある人や、知的障害ある人が、判断能力が十分でない場合、そういった人たちを保護するために作られた制度です。十分に判断する能力がないことを、事理弁識能力を欠くといいますが、こういった場合、自分で正しい判断をすることがむずかしいため、詐欺に合ったり、勝手に財産を処分されるなどの被害にあわないように、サポートするため、家庭裁判所が選任をして、後見人をおくことで、保護するための制度です。
 後見人になる人は、家族、弁護士、司法書士などが選任されることが多いです。専門家に依頼する場合は、費用は必要になってきます。
 上記の場合、お母さんが認知症なので、後見人が選任されていない場合は、選任する必要があります。家庭裁判所で選任が終わったら、その選任された後見人が、認知症であるお母さんの代理人となって、遺産分割の協議に加わることなります。
 遺産分割後の署名や手続きは後見人が代理人として行うことになります。もちろん、協議のあとも、後見人としての役割を果たす必要があります。
 上記の場合は、相続人が、認知症の母と息子の2人であったため、もし息子が後見人になると、実質相続人はひとりになってしまします。そうなると、息子の都合のよいように相続分割をしてしまうことがないとはいえません。ですので、こういう場合は、お母さんの相続の権利を保護するために、特別代理人を選任しなくてはなりません。この手続きも家庭裁判所でおこなうことになります。
 父・母・子の家族で、父が亡くなった場合、残された財産の中には、マンションなどの不動産が含まれることは多いと思います。お父さん名義のマンションに住んでいる場合が多く考えられるため、お父さんが亡くなると、お母さんがそのまま相続しないと、そのマンションを出て行かなくてはならなくなりますよね。一般的にはないでしょうけれど、母子の仲が悪くて、母が認知症の場合、息子が母の後見人になってしまうと、息子が母にマンションを相続させない可能性もないとはいえません。ですので、上記の場合などは、特別代理人を選任する必要があるのです。

遺書


 急に人が亡くなった場合、遺書があるかどうかわからない。たしか書いていたはずだけど、遺書が見つからないということはよくあることではあります。
 急に亡くなっても、お葬式などいろんな手続きをしなければならないし、必要書類もたくさん出てきます。また、亡くなったと同時に相続が開始となるため、亡くなった人の財産を確認しなくてはなりません。遺書があれば、財産をそのとおりに分割すればよいですが、ない場合は、一から相続人たちと遺産分割協議をすすめなくてはなりません。
 ですので、やはり遺言書は隅々まで探す必要があります。そうでないと、遺言書が見つからない中で、遺産分割協議で分割を決定した後に、遺言書が見つかり、協議内容と全く違った内容になっていたら、協議をやり直す必要がでてきます。そすれば、相続人たちの時間と労力の無駄になってしまいます。
 遺言書が公証人役場で公正証書遺言として書かれていることを知っている場合は、探すことは容易です。どこの公証役場かわからない場合でも、公証役場は情報を全国で一括管理しているので、最寄りの公証役場で照会ができます。もちろん誰でもできるわけではないですが、照会時の必要書類は、被相続人との関係がわかる戸籍謄本と被相続人が死亡したことを証明する戸籍謄本です。
 公正証書遺言ではなく、被相続人が書かれた遺言だと、どこにあるかを知らないと、見つけるのは困難でしょう。被相続人と親しい友人に確認するなどして保管場所を確認するなどするしかないでしょう
 結局、見つからず、遺産分割協議が成立した後に、遺言書が見つかった場合は、その遺言書が法的に有効と判断されれば、遺産分割協議と遺言書に相違があると、分割協議での内容は無効となってしまいます。財産はあくまでも被相続人の財産なので、遺言書は、被相続人の意思であるため、遺言書が優先されるのです。
 ただし、相続人の全員が、遺言書の内容ではなく、分割協議の内容を納得している場合は、遺産分割協議をやり直す必要はありません。1人でも不服な相続人がいる場合は、再度協議が必要となります。
 また、被相続人が公証役場に通さずに残した遺言書は、家庭裁判所で、検認の手続きが必要で、勝手に開封することは認められていません。
ちなみに、被相続人が公証役場を介さずに書いた遺言書の場合は、家庭裁判所にて検認の手続きが必要となる為、勝手に開封する事は許されていません。
 財産のためというわけではないですが、相続人となる人は、被相続人とのコミュニケーションをふだんからもっておくことは、重要かと思います。マンションなどの不動産が相続財産となると、金銭だけの場合より、必要書類ややるべきこともはるかに多くなってしまいます。

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