中古マンション売却査定のポイント(175)財産分与とマンション売却

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『財産分与』とは

 

今回は,『財産分与』についてご説明します。
『財産分与』いう言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが,そもそも『財産分与』とは何でしょう。
『財産分与』とは,夫婦が婚姻中に協力して築いた財産(共有財産)について,離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することです。
財産分与の対象となるのは「共有財産」です。
婚姻前からあった双方の預貯金や婚姻前に一方が購入した不動産などは「特有財産」といって財産分与の対象とならず,婚姻後に貯めた現金・預貯金や婚姻後に購入したマンションなどが財産分与の対象となります。
よく,「結婚してからも自分で稼いだお金は自分名義の口座に貯めている。これは私のお金だから,離婚しても相手には渡さない。」という話を耳にしますが,婚姻後の預貯金については,名義のいかんを問わず,原則として共有財産として財産分与の対象となりますので,注意が必要です。
ところで,「それぞれの貢献度に応じて分配する」という点ですが,夫婦によっては妻が専業主婦である場合や共働きである場合などがありますが,基本的には共有財産に対する貢献度は50%ずつと評価されることがほとんどです。
例えば,妻が会社を経営して極めて高額な所得がある一方で夫は無収入の上,ほとんど家事もしないという例では,夫の貢献度は50%以下と評価されることもありますが,専業主婦(夫)であったり,共働きで夫婦間に多少の収入格差があったとしても,婚姻後の財産は夫婦でお互いに同等の貢献度で築いた財産と評価されるのです。

婚姻後に購入した中古マンションについて

 

離婚するに当たっては,預貯金,有価証券,車,保険解約返戻金,退職金や家具家財といったあらゆる財産について財産分与が必要ですが,一番大きな財産と言えるのは,やはり婚姻後に購入した不動産でしょう。
婚姻後,夫婦の新居としてマンションを購入して一緒に住んでいた,という場合には,離婚に当たって,当然中古マンションも財産分与の対象となります。
この時,妻は専業主婦で収入がなかったため,夫名義でマンションを購入した,という場合であっても,妻には「内助の功」がありますので,妻には50%の貢献度が認められ,基本的にはマンションの2分の1の持分について妻の権利が認められるでしょう。
ところで,中古マンションについて財産分与をする場合,その方法としては①売却せずに財産分与をする場合と,②売却した上で売却金額を分配する場合,の2通りが考えられます。

(1) 売却せずに財産分与をする場合

例えば,夫は既に中古マンションから出て別の場所に住んでおり,妻だけが中古マンションに住んでいるという別居状態の場合で,離婚に際して中古マンションが売却せず,離婚後も妻が引き続き居住し続けたい,ということもあるでしょう。
婚姻後に購入した中古マンションについては,これまで説明したとおり,原則として夫と妻が2分の1ずつ権利を持っています。
ですので,財産分与の1つの方法としては,離婚後,妻が夫に対して夫の持分2分の1に相当する賃料を支払って中古マンションに住み続ける,ということが考えられます(その前提として,中古マンションが夫の単独名義である場合には,まずは2分の1の持分について妻名義に持分移転登記をする必要があります。)。
ただ,離婚後は一切関係を持ちたくない,ということも多いでしょうから,その場合には,財産分与時に,妻が夫に対してその持分2分の1に相当する金額を支払い,中古マンションは売却せず妻の単独所有にしてしまうという解決も可能でしょう(財産分与の対象となる預貯金について夫名義の預貯金が多ければ,そこから中古マンションに係る夫の持分相当額を控除するという方法で妻から夫に支払った上で,その残額を夫と妻で分配する,ということになるでしょう。)。
ところで,この時,ローンが残っている場合には,財産分与時の中古マンションの査定価格からローンの残額を控除した額を不動産の現在価値とした上で,妻から夫に対して持分相当額を支払って財産分与することになります。
例えば,上記の例で,中古マンションの市場価値が2500万円と査定され,1000万円のローンが残っている場合,その中古マンションの価値は1500万円(2500万円-1000万円)ですので,妻が夫に対して750万円を支払った上,離婚後のローンは妻が支払っていくことになります。

(2) 売却した上で財産分与をする場合

夫も妻も中古マンションに住み続けたいという希望がなければ,中古マンションを売却した上で,売却金額を分配することになるでしょう。
中古マンションを売却した上で財産分与をする場合,『特有財産』の扱いについて注意が必要です。
『特有財産』とは,「婚姻前から有していた財産」と,「婚姻中に夫婦の協力とは無関係に得た財産」のことです。
先に簡単に触れましたが,例えば,婚姻前に貯めていた預貯金や婚姻後に実の両親が死亡して得た遺産などです。
『特有財産』については,財産分与の対象とはならないことに注意が必要です。
婚姻後に夫婦でマンションを購入するにあたり,妻又は夫が独身時代の預貯金から頭金を出した,あるいは,妻又は夫の両親が頭金を援助した,というような事情があれば,その頭金分は拠出した側の『特有財産』として財産分与の対象とはならないのです。
例えば,婚姻後,夫婦で5000万円のマンションを購入するにあたり,妻が独身時代に貯めた貯金から500万円の頭金を出し,4500万円のローンを組んだという例でご説明します。
そのような事例で,離婚に当たり,マンションの査定価格が4000万円,ローンの残額が3000万円になっていたとしましょう。
ローン分を差し引いた中古マンションの現在価値は1000万円,購入時のマンション価値の5分の1です。
一方,妻の特有財産分についても現在価値に計算し直し,マンションの現在価値分から控除する必要がありますが,妻の特有財産の500万円について現在価値に引き直すと100万円(500万円×5分の1)ですので,それをマンションの現在価値1000万円から差し引いた900万円(1000万円-100万円)が財産分与の対象となるのです。
ですので,離婚に当たり,マンションを売却する場合には,財産分与として夫と妻がそれぞれ450万円ずつ取得することになります。
(なお,売却にあたり,不動産会社に仲介を依頼する場合には,不動産会社への仲介手数料や印紙代等の諸経費がかかりますが,これらの経費についても,妻及び夫がそれぞれ2分の1ずつ負担します。通常であれば,売却金額から必要経費分を差し引いた上で売却金額を2分の1ずつ分配することになるでしょう。)
また,夫婦の一方が婚姻前にマンションを購入して単独でローンを弁済していたという場合にも,婚姻前に弁済したローン相当額については一方の特有財産となります。
例えば,婚姻前に夫が4000万円のマンションを全額ローンで購入し,婚姻後,夫婦でそのマンションに住んでローンを弁済していたという事例で,婚姻時にはローン残額が3000万円になっていた,という場合,夫が婚姻前に弁済したローンの1000万円分については,夫の特有財産と評価されます。
ですので,例えば,離婚時のマンション査定価格が4000万円,ローン残額が1000万円であったとしたら,マンションの現在価値3000万円から夫の特有財産分750万円を差し引いた2250万円が財産分与の対象となります。
財産分与に当たり,双方に弁護士がついているような場合には,特有財産の計算等を失念することはありませんが,弁護士をつけることもなく,双方の話し合いだけで離婚をする場合には,特有財産については財産分与の対象外になる,ということはよく覚えておきましょう。
また,離婚をする前に長期間別居していた,という事例では,別居時から離婚時までの間に,双方の財産が増減することがよくありますが,このような場合に,財産分与の対象となる財産は,別居時が基準なのか,離婚時が基準なのか問題になることもあります。
更に,別居中も一方がローンを支払い続けていた,というケースで,別居中に支払っていたローンを財産分与に当たってどのように評価するのか,という問題などもありますので,離婚に当たり,財産分与が必要となる場合には必ず一度弁護士に相談をすることをお勧めします。


中古マンションの売却と査定

 

以上,中古マンションについて売却せずに財産分与する場合と売却して財産分与をする場合の注意点などについて簡単にご説明しましたが,いずれにしても,中古マンションについて財産分与が必要となる場合,査定をした上で,中古マンションの客観的な市場価値を正確に把握することが必要です。
中古マンションを売却せずに夫又は妻の一方が所有権を取得する場合には,他方に持分相当額を支払う必要がありますので,所有権を取得する側はできるだけ低い査定価格を希望するでしょうし,持分を譲る側はできるだけ高い査定価格を希望するでしょう。
このような場合,一つの不動産業者に査定を依頼するだけではなく,不動産の一括査定を行うサイトなどを使い複数の不動産会社に査定をしてもらうのをお勧めします。
複数の不動産会社に査定を依頼すれば,査定金額にかなりの幅がでるかと思いますが,その中で,双方が納得できる査定価格を探ることが必要でしょう。
また,中古マンションを売却した上で,売却金額を分配する場合にも,双方が納得できる査定を経た上で,売却を仲介する不動産業者を選定することが必要です。
この時,一方が選んだ不動産業者では相手方が納得しないこともよくあります。
離婚に際しては,完全に夫婦関係が破綻してしまい,相手方のことを一切信用できなくなっていることがままあります。
離婚を求める側が一方的に中古マンションの査定をした上で,売却を依頼する不動産業者を選定した,というのであっては,到底相手方は納得しないでしょう。
離婚に当たり,相手方との余計なトラブルを回避するためには,双方が納得できる形で査定をした上で不動産会社を選定し,売却することが必要です。

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