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結論:マンションの売り時を決める5つの軸
マンションの売り時は、単一の理由では決まりません。次の5つの軸を重ねて判断するのが実務的です。①築年数(下落カーブの節目)②所有期間(譲渡所得税の税率が5年で変わる)③季節(1〜3月・9〜11月が需要期)④金利・市況(買い手の購買力に影響)⑤ライフイベント(住み替え・相続・転勤などのご自身の事情)——このうち最後の「ライフイベント」が最終的な決め手になることが多く、相場だけを理由に売り急ぐ必要はありません。以下、それぞれを一次データで具体的に見ていきます。
市況データで見る「今」(2026年7月度・一次データ)
下表は東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表した2026年7月度・月例速報の首都圏中古マンションの数値です。
| 指標(首都圏・中古マンション) | 2026年7月 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 成約㎡単価 | 84.17万円/㎡ | −1.5% (3か月連続で下落。ただし前月比は+1.9%) |
| 成約件数 | 3,638件 | −8.6% (4か月連続で減少) |
| 在庫件数 | 47,151件 | +5.5% (5か月連続で増加) |
| 成約築年数 | 27.7年 | − |
出典:東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート(2026年7月度)」。数値は首都圏(1都3県)全体・中古マンションの前年同月比です。
首都圏合計では成約㎡単価が3か月連続で下落していますが、これは全エリアが一様に値下がりしているという意味ではありません。エリア別に見ると内訳が大きく割れています。
| エリア | 成約㎡単価(万円/㎡) | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 東京都区部 | 135.77 | +2.7%(75か月連続上昇) |
| 東京都多摩 | 58.44 | +10.5%(12か月連続上昇) |
| 横浜・川崎市 | 65.62 | −2.5%(13か月ぶり下落) |
| 神奈川県他 | 43.71 | +5.3%(7か月連続上昇) |
| 埼玉県 | 44.53 | +2.3%(7か月連続上昇) |
| 千葉県 | 41.37 | −0.1%(6か月ぶり下落・ほぼ横ばい) |
出典:東日本レインズ 2026年7月度月例速報(エリア区分別)。首都圏合計の下落は、価格水準が最も高い東京都区部の成約件数が−17.2%と落ち込み全体構成比が下がったことが主因で、区部自体の単価は上昇を継続しています。加えて横浜・川崎市(13か月ぶり下落)と千葉県(6か月ぶり下落)は構成比の問題ではなく実勢としても価格が下がっており、首都圏合計の下落は「構成変化」と「一部エリアの実勢下落」の複合要因です。
つまり「首都圏の相場が下がり始めた」と一括りにはできず、お住まいのエリアが実際にどちら向きなのかをまず確認することが売り時判断の出発点になります。エリア横断の目安は不動産情報ライブラリで近隣の成約事例を確認すると精度が上がります。
築年数で見る売り時の目安
マンションの価値は入居直後から徐々に下がり、いくつかの節目で下落幅が大きくなる傾向があります。
| 築年数の目安 | 傾向 |
|---|---|
| 〜2年 | 価値の下落が最も大きい時期。ただし住宅ローンの残債が多く、仲介手数料等を含めると手取りで損をしやすい |
| 10年以内 | 築浅の需要が強く、比較的高値を維持しやすい時期 |
| 15年前後 | 大規模修繕の実施状況が査定に影響し始める時期 |
| 20年超 | 下落幅が緩やかになる(下げ止まりに近づく)時期。売却を急ぐ必要は薄れる |
ただしこれは一般的な傾向であり、駅距離・階数・向き・管理状態によって同じ築年数でも査定額は変わります。階数や方角による違いの目安はマンション査定は階数でいくら変わる?方角・管理状態の影響も解説で詳しく解説しています。
季節で見る売れやすい時期
中古マンションの需要には季節性があります。1〜3月は4月の新生活・入学に合わせた転居需要で契約件数が増える時期、9〜11月は10月の転勤辞令に合わせた第2の需要期です。逆に8月・1月は夏季休暇や年末年始で内覧希望者の動きが鈍り、比較的成約しにくい時期とされています。3月の引き渡しを狙うなら、半年ほど前の秋頃から査定・不動産会社選びを始めるのが実務上の目安です。ただし需要期は他の売主も売り出しを集中させやすいため、価格競争になりやすい面もあります。
金利とライフイベントという視点
住宅ローン金利の動向も、買い手の購買力を通じて相場に影響します。金利が上昇すると同じ返済額で借りられる金額が減るため、買い手の予算感がシビアになりやすい局面です。日本銀行の金融政策の動向は、住宅ローンの適用金利改定を通じて数か月〜半年程度遅れて市場に反映される傾向があります。
もっとも、相場や金利は自分でコントロールできない外部要因です。実務上は住み替え・相続・転勤・離婚といったご自身のライフイベントが売却時期を決める最大の要因になることがほとんどです。相場が多少不利でも事情があれば売却する必要がありますし、逆に相場が有利でも事情がなければ急ぐ必要はありません。
「2019年の売り時予測」はどうなったか——答え合わせ
本記事は2019年に、当時の情勢をもとに「東京オリンピック開催までが売り時」「オリンピック後・生産緑地の2022年問題で価格が大きく下がる」という予測を掲載していました。2026年8月時点の一次情報で、その2つの予測を検証します。
予測①「オリンピック後にバブル崩壊」→ 崩壊は起きていない
東京都区部の中古マンション成約㎡単価は、東京オリンピックが開催された2020年の5月から2026年7月まで75か月連続で上昇しています(東日本レインズ)。開催後に相場が急落するという予測とは逆に、価格は上昇を続けました。一方で成約件数は近年減少傾向にあり、「価格は上がったが売れる件数は減った」という、当時想定されていなかった形での市況変化が起きています。
予測②「生産緑地2022年問題で地価が暴落」→ 制度延長で回避された
1992年指定の生産緑地の多くが2022年に指定30年を迎え、宅地への転用が一斉に進んで地価が下がるとされていました。しかし2018年施行の特定生産緑地制度により、対象地の約9割(89.3%)が指定期間の延長を選択し、一斉の宅地化・供給過多は回避されました(国土交通省が2022年12月末時点の確定調査として2023年2月に公表した特定生産緑地指定状況にもとづく)。懸念されていた地価暴落は発生していません。
この2つの答え合わせからわかるのは、数年先の相場を単一の外部要因(イベントや制度)だけで予測するのは難しいということです。売り時の判断は、そのときどきの一次データを確認しながら、最終的にはご自身の事情で決めるのが現実的です。
売却にかかる費用と税金
手取りを正しく見積もるために、主な費用と税金を押さえておきましょう。
仲介手数料
売買価格が400万円を超える場合、仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」で計算します。これは上限額であり、実際の金額は不動産会社との取り決めによります。
譲渡所得税(所有期間で税率が変わる)
売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して税金がかかります。税率は所有期間で変わり、売却した年の1月1日時点で所有5年以下は短期・5年超は長期に区分されます。
| 区分 | 所有期間 | 税率(所得税+住民税・復興特別所得税込み) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
| 軽減税率(マイホーム・10年超所有) | 10年超 | 14.21% (課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分) |
出典:国税庁タックスアンサー No.3211 短期譲渡所得の税額の計算/No.3208 長期譲渡所得の税額の計算/No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例。
売却した物件がご自身の住まい(居住用財産)であれば、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける3,000万円の特別控除が使える場合があり、10年超所有であれば上記の軽減税率と併用できることもあります。適用には要件があり、投資用として貸していた住戸などは対象外となる場合があるため、実際の適用可否は国税庁の情報や税務署・税理士に確認してください。より詳しい計算方法は不動産売却の譲渡所得税計算方法|税率・特別控除をシミュレーションで解説しています。相続で取得したマンションを売却する場合は税金の考え方が一部異なるため、相続した不動産の売却|押さえるべき3つの期限と遺産分割・税金の実務もあわせてご確認ください。
仲介で売る以外に「買取」という選択肢もある
ここまでは仲介(買主を市場から探す方法)を前提にしてきましたが、当社のように不動産の買取・再販を手がける会社に直接売る「買取」という方法もあります。
| 比較軸 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 価格の目安 | 相場に近い(=価格の天井を狙える) | 相場より低くなりやすい(=価格の床) |
| 売れるまでの期間 | 買主が見つかるまで時間がかかる | 短期間で現金化しやすい |
| 向いているケース | 時間をかけてでも高く売りたい | 売却期限がある・内覧を避けたい・訳あり事情がある |
築年数の節目だからといって焦って判断する必要はありません。時間に余裕があれば仲介で相場に近い価格を狙い、住み替えや相続で期限が決まっている、内覧の手間を避けたいといった事情があれば、買取のほうが総合的に有利になることもあります。どちらが得かは物件と事情によるため、仲介の査定と買取の見積もりを両方取って比べることをおすすめします。
売却の流れ(4ステップ)
- 複数社に査定を依頼する:一括査定サービスで複数社から査定額を取り、相場観と対応の丁寧さを比較します。
- 媒介契約を結ぶ:信頼できる会社を選び、専属専任・専任・一般のいずれかの媒介契約を結びます。
- 内覧・価格交渉に対応する:内覧希望者への対応と、必要に応じた価格交渉を行います。
- 売買契約・決済・引き渡し:契約後、代金決済と同時に引き渡しを行い売却が完了します。
査定から引き渡しまでは、早くて3か月、内覧希望者が見つかりにくい場合は半年以上かかることもあります。売却したい時期から逆算して行動を始めるのが実務的です。
失敗しないための注意点
査定額を比較する際は、一社だけで決めないことが重要です。相場より極端に高い査定額を出す会社は、契約獲得を目的にしている可能性があり、結局売れずに大幅な値下げに至るケースもあります。複数社への査定依頼が失礼にあたるのではと気にする方もいますが、不動産売却の相見積もりは失礼?何社が目安か・査定書の見方・断り方で解説しているとおり、相見積もり自体は一般的な行為です。また、内覧前には室内の清掃・目立つ傷の補修を行っておくと、査定・成約の両面で有利に働きやすくなります。
よくある質問
Q. マンションは今売っても損しませんか?
A. エリアによって方向性が異なります。2026年7月度のレインズ統計では東京都区部・多摩・神奈川県他・埼玉県は成約㎡単価が前年同月比プラスですが、横浜・川崎市と千葉県はマイナスに転じています。まずはお住まいのエリアの一次データを確認し、複数社の査定で相場観を確かめることが損を避ける近道です。
Q. 築何年で売るのが一番お得ですか?
A. 一般的には築10年以内は価値を維持しやすく、20年を超えると下落が緩やかになり急いで売る必要は薄れます。ただし駅距離・階数・向き・管理状態によって同じ築年数でも査定額は変わるため、個別の物件は複数社の査定や不動産情報ライブラリの近隣事例で確認するのが確実です。
Q. 売却に向いている季節はいつですか?
A. 新生活シーズン前の1〜3月と、転勤時期にあたる9〜11月が需要期とされています。逆に8月・1月は内覧希望者の動きが鈍りやすい時期です。ただし需要期は他の売主も売り出しを集中させるため、価格競争になりやすい面もあります。
Q. 2019年の「オリンピックまでが売り時」という予測は正しかったのですか?
A. いいえ。東京都区部の中古マンション成約㎡単価はオリンピック開催後の2020年5月から2026年7月まで75か月連続で上昇しており、当時懸念されていた「開催後の暴落」は起きていません。同様に「生産緑地2022年問題」による地価暴落も、特定生産緑地制度による指定延長(対象地の約9割)で回避されました。数年先の相場を単一のイベントで予測するのは難しいという教訓として、本記事もその予測を撤回し訂正しています。
Q. 売却でどのくらい税金がかかりますか?
A. 利益(譲渡所得)に対して、所有5年以下なら39.63%、5年超なら20.315%の税率がかかります(国税庁)。マイホームで10年超所有なら軽減税率14.21%(6,000万円以下の部分)、居住用財産なら3,000万円の特別控除が使える場合があります。適用要件があるため、詳しくは国税庁の情報や税務署・税理士にご確認ください。
Q. 仲介と買取、どちらで売るべきですか?
A. 時間に余裕があり少しでも高く売りたい場合は仲介、売却期限が決まっている・内覧の手間を避けたい・訳あり事情がある場合は買取が向いています。どちらが得かは物件と事情次第のため、両方の見積もりを取って比較することをおすすめします。
まとめ:相場は判断材料の一つ、決め手はご自身の事情
マンションの売り時は、築年数・所有期間(税率)・季節・金利・ライフイベントという5つの軸を組み合わせて考えるものです。2026年7月度の一次データでは、エリアによって相場の向きが割れており「首都圏全体が値下がり局面」と一括りにはできません。過去の本記事が予測した「オリンピック後の暴落」「生産緑地2022年問題による地価暴落」はいずれも実際には起きておらず、数年先の相場を単一の要因で言い当てるのは容易ではないこともわかりました。相場はあくまで判断材料の一つとして確認しつつ、最終的な決め手はご自身の事情に置くのが現実的です。
まずは複数の一括査定サービスに申し込み、自分の物件の査定価格を比べてみましょう。いずれも査定の申込みは無料ですが、申し込むと提携する不動産会社から査定価格の提示や連絡が届く仕組みです。利用条件やサービス内容は各社の案内をご確認ください。
本記事は株式会社スマートアンドカンパニー編集部が、東日本不動産流通機構・国土交通省・国税庁の公表資料を確認して作成しました。市況の数値は2026年7月度の公表値です。制度や相場は変わるため、売却の判断は最新の情報とあわせてご確認ください。




