表見代理と相続について

遺産相続の基礎知識

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表見代理


 表見代理とは、無権代理のうちのひとつです。無権代理は前回説明させていただきましたが、代理を行った人が、そもそも代理の権利がないことでしたよね。でも、相手の人は、代理の人に権利がないとは思わないでしょうし、代理の人が権利を持っていると主張すれば、信じてしまいます。ですので、本来、代理の権利がない無権代理に、相手側を保護するように定められた法律があります。
 例えば、契約をするときに、相手が、代理権がない人だとわからない状態で、相手も、自分は代理人であると主張していたにもかかわらず、後で、その人に代理権がない事を知ってしまうと、大きな損害が出る可能性があります。特にマンションや土地などの不動産を売却したり、購入したりする場合は、とても大きなお金が動きます。その全部を、代理権がなかったからという理由で、契約がなかった事になってしまい、無権代理の人に、何のペナルティーも生じなければ、相手を信じて契約した人は、あまりにもかわいそうです。 そのため、代理権がない事を知らないで契約し、損害が出ないようにするためにも、この知らなかった人を保護する必要はあります。もちろん、契約する際には、契約相手に、きちんと代理権があるかどうか慎重に確認することは必要です。
 だから、結果的に代理権がなかったとしても、表面上、代理権があるように間違って認識させるような特殊な事情があった場合は、無権代理だと知らなかった人を保護するべきでしょう。というのが、表見代理です。
 つまり、Bさん(本人)が、Aさん(相手)と契約するために、Cさん(無権代理)を無権代理とは知らないで、代理人だと思って契約したとします。もちろんこの場合、Aさんも被害者ですよね。Aさんは、Cさんが勝手に代理人だとうそをついて、契約をされたわけです。だから、Aさんを保護すべきですよね。しかし、そうなると、Bさんはどうなるでしょうか?代理人だとBさんも騙されているわけですから、Bさんの保護も必要ですよね。
 つまり、Bさんから見て、Cさんが代理権がある人だと信じても仕方がないという場合にかぎって、「表見代理」が認められます。
 例をあげてみましょう。AさんがCさんに白紙の委任状を渡していたとします。ですので、実際にはAさんはCさんに代理権を与えてはいないのですが、Cさんがそれを悪用してBさんに代理人ですと主張して、マンションを売却する契約をしたとします。または。AさんからCさんはマンションの賃貸についてだけ代理権を持っていたにもかかわらず、そのマンションをBさんに代理人として売却してしまったとします。
 こんな感じで代理権がない無権代理だとは知らないで、契約をしてしまった相手の方を保護する法律が表見代理です。
 ありそうでなさそうな。。。最近は騙す人も騙すテクニックもレベルがあがっているように思います。そのテクニックをよいことに使ってほしいものです。マンションなどの不動産売却による詐欺事件もたまにニュースで見かけますが、高額な契約の場合は、しっかりと必要書類にも目を通して騙されないようにしてくださいね。

相続の開始


 遺産の相続の開始は、民法882条「相続は死亡によって開始する」と定められています。つまり「被相続人」が亡くなったときに、相続は開始します。その被相続人が持っている権利や財産などが、被相続人が亡くなると同時に、相続人への相続が始まるのです。何か特別な開始の要件などはあるわけではなく、「被相続人が死亡する=相続開始」ことになります。そのため、相続する人は、相続に応じるかどうかを問わず、被相続人の財産を相続するのです。
 死亡によって、相続が始まり、それから、分割、または、相続の放棄などの手続きを行うことになります。つまり、法律では、被相続人が亡くなることによって、財産の帰属主体がなくならないように、死亡と同時に、まずは相続を開始することとしています。
 では、脳死の場合はどう考えたらよいのでしょうか? 脳は死んでいるけれども、体は生きている状態なのです。これは難しい問題なのです。
 例えば、脳死判定を受けて、臓器を誰かに移植することになったとしましょう。もちろん、移植の法律にも、規定があります。この規定には、「脳死した=相続の開始の原因になる死亡」と確定することはむずかしいのです。しかし、移植がされた場合は、死亡に該当すると考え方もあるので、移植された時点で、相続の開始の原因になるとも言われています。基本的に、死亡については、お医者さんしか判断できません。お医者さんが死亡診断書に亡くなった時刻を記入しますが、それに従うこととなります。
 他に、死亡したかどうかがわからないケースもあります。どういうことかというと、行方不明によって生きているのか、亡くなっているのかがわからない場合です。最近、高齢者の方の行方不明も増えていると聞きます。または、事故、災害などに巻き込まれて生死が不明の場合などもあります。東日本大震災の時には、大きな津波がやってきたことによって、いまだに行方不明の方がいらっしゃいます。(ご家族の方は、本当につらいことだと思います。)
 こういった場合は、相続人はとても不安定になりますし、いろんな負担もかかります。そのため、法律では「失踪宣告」という制度を設けています。この宣告をすることにによって、生きているか、亡くなっているかわからない人を、法律によって「死亡したもの」とみなす制度です。
 また、「認定死亡」と言う制度もあります。失踪宣告をするには、1年の期間や家庭裁判所の失踪宣告が必要ですが、認定死亡の場合は、死亡したとされる人の管轄している市町村に報告することで、すぐに認定を受ける事が可能になっています。死亡した可能性が高いけれども、遺体が見つからない場合や、遺体の損傷などが著しく激しい場合など、様々な事情が想定されるため、このような制度があるのです。

相続における胎児について


 まだ産まれていないお母さんのお腹の中にいる胎児は、相続をする事が可能であることを、みなさんご存知でしょうか? 日本の相続の法律では、お腹の中にいる胎児は、相続する権利をもっています。ただし、胎児という状態で権利があったとしても、お腹の中に存在はしていても、世の中にはまだ存在しているわけじゃないので、生まれて来ないと、その権利はなかったものとなってしまいます。だから、残念なことに、流産や死産などで生まれてくることができなかった場合は、相続については最初からいなかったものとしてみなされてしまうのです。
 日本の法律の民法に「権利能力」という言葉があります。権利・義務の主体になることができる資格のことを言います。日本人としての義務や権利などを持つと定められていますが、この権利能力が認められるのは出生と同時に持つとされているため、まだ産まれていない胎児にはこの権利能力はないのです。
 しかし、相続に関しては少し異なります。胎児の相続に関して「時間差によることへの胎児の不利益」というものがあり、相続は「同時存在の原則」というものがあります。どういうことかというと、「財産を相続できる人は、財産を残す人が亡くなった時に生きている人に限られる」という原則です。
 つまり、この原則から見ると、胎児は例外となります。民法886条第1項「胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなす」とあります。お腹の中で順調に育つと、いずれ生まれてくるわけです。しかし、もし、兄弟姉妹がすでに存在していると、生まれてくるにも関わらず、胎児であった事を理由に相続人とならないとなれば、胎児に不利益が生じることとなります。そのことを防ぐために、この法律がつくられたと理解されています。また、胎児は、財産の相続だけではなく、当然債務の相続の場合もあります。この場合も、死産や生まれてこれなかった場合は、権利を失うこととなります。生まれてきた場合は、相続の開始の時にさかのぼって相続をする事になります。
 つまり、生まれるまでは相続人の確定ができない為、遺産分割の協議については、相続人に胎児が存在する場合、その胎児が生まれてくるまでは、協議はできません。
 新しい命が生まれてくることは大変喜ばしいことですが、人は必ずいつかは亡くなります。そんな生と死が、相続においては、同じ時期におこると、家族はとても大変ですが、そんなときも、争族とならないように、法で定められているのです。

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